家族経営企業には「1代で栄え・2代でそこそこ・3代で潰す」という言葉がある。親が金持ちなら、子どもも金持ちになれるのか。お金持ちの家に生まれる子には、一体どのような運命が待ち構えているのか。専門家が解説する。

残念な2世・3世はなぜ生まれるのか

経営者や金持ちになる資質は、遺伝する場合もあるし、そうでない場合もある。

このテーマについて語るとき、とても良い例となる一家の話があります。薩摩治郎八という男をご存じでしょうか。近代、木綿商店で巨万の富を築いた薩摩治兵衛の孫として生まれ、2代目までなんとか継続できていた商売を、自分の代で駄目にしてしまった男です。

甘やかされた放蕩息子 薩摩治郎八氏(AFLO=写真)

甘やかされて育った治郎八は、心の赴くままヨーロッパで豪遊し、10年間で約600億円(現在の貨幣価値に換算)を散財したといわれています。

当時すでに経営が傾き始めていたにもかかわらず、親や祖父は子ども可愛さに、豪遊させた。潰れてしまうのは明らかです。父と祖父は苦労人ですから、もしかすると治郎八には苦労させたくない、という想いがあったのかもしれません。そのあたりの事情は調べても出てこなかったので推測でしか言えませんが、継がせようと本気で思っていたら、おそらく厳しく育てたと思います。