これまで中央アジアのシルクロード一帯は、高額なパッケージツアー向けのエリアで、旅行するにはハードルが高かった。だが状況が急速に変わりつつある。旅行作家の下川裕治氏は「個人旅行が解禁となり、いまシルクロードは『10日間10万円』で旅行できるエリアになっている」という。日本での情報が少ない中央アジアを旅する魅力とは——。

※本稿は、下川裕治『10万円でシルクロード10日間』(KADOKWA)の一部を再編集したものです。

撮影=中田 浩資
ウズベキスタン・ブハラに佇むイスラム教史跡。ブハラの旧市街は世界遺産に登録されている

劇的に行きやすくなったシルクロード

かつて中国の新疆ウイグル自治区や中央アジア、つまりシルクロード一帯は、パッケージツアー向けのエリアだと思われていた。遺跡へのアクセスの悪さ、言葉の不自由さ、システムの違いなどがその理由だった。たしかにこのエリアは、以前、社会主義の枠組みのなかに組み込まれていた。中国は社会主義の体制を堅持している。

しかし中央アジアの国々がソ連から独立し、中国は社会主義の体制を守りながら開放政策に舵を切ってから、旅のシステムは大きく変わってきた。旅をする……という視点から見れば、自由主義圏を訪ねることと大差がなくなってきている。ここ1、2年は、個人旅行者が急増している理由もそのあたりにあるように思う。

きっかけは、カザフスタン、キルギス、ウズベキスタンといった中央アジアの国々が、観光ビザ免除に動いたことだった。旧社会主義系の国々は、観光ビザ免除といっても、空路入国に限定するなど、さまざまな制約をつけることが多い。ところが中央アジア各国は、そういった限定ルールを付加しなかった。陸路で入国する旅行者にも、条件なしでビザ免除に踏み切ったのだ。

中国はもともと、入国に対して制約は加えていなかった。その結果、完全な自由旅行が実現したわけだ。気軽にこのエリアを旅する女性が急増している。そんなエリアになったのだ。

ビザが不要、かつ個人旅行が可能になったということで、自由に旅のスケジュールを組めるようになった。始発点である中国の西安から、シルクロード観光のハイライトといえるウズベキスタンまで、電車などを乗り継いで10日間10万円で旅することもできるようになったのである。