ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」をはじめ、「天丼てんや」「リッチモンドホテル」などを展開するロイヤルホールディングスは、リーマンショック後に業績が低迷していたが、その後業績を回復し、いまは堅調な経営が続いている。長期的視点でグループ事業を展開する戦略に転換したからだ。それを主導してきたのが菊地唯夫会長である。経営改革をどう進めてきたのか、菊地会長に話を聞いた。2回にわたって掲載する。
ロイヤルHD4つの事業の柱が外食、コントラクト、機内食、ホテルだ。

なぜ持続的成長を目指すのか

——ロイヤルホールディングス(以下ロイヤルHD)の歩みと事業内容について教えてください。

【菊地】ロイヤルは1951年に福岡で機内食搭載と喫茶営業で創業し、ファミリーレストランの「ロイヤルホスト」を中心に外食事業を展開してきて、私が入社した翌年の2005年にホールディングス制に移行しました。現在、ロイヤルHDは、4つの事業を柱に展開しています。第1がファミリーレストラン「ロイヤルホスト」「天丼てんや」などの外食事業、第2が空港ターミナルビルや病院などの飲食・物販施設の展開を受託するコントラクト事業、第3が機内食事業、そして第4がホテル事業です。

——ロイヤルHDの事業展開において、菊地会長が心がけていること、基本方針としていることは何ですか?

【菊地】現代の経営戦略において最も大切なのは、サスティナビリティ(持続的成長)だと思っています。今後日本は、人口が大幅に減少する時代に本格突入しますから、市場が縮小しても持続的に成長できるビジネスモデルをつくっていかなければなりません。また、ファイナンスの教科書には「企業価値とは、その企業が将来生み出すキャッシュフローの現在価値の総和である」という言葉が必ず出てきますが、この企業価値、そして企業の存在意義も、経営の基本に考えていることです。

——菊地会長がサスティナビリティ、持続的成長重視の経営をしているのは、昨今の時代背景以外にも理由がありますか?

【菊地】私が以前勤めていた日本債券信用銀行(日債銀)が1998年に経営破綻したことが大きく影響しています。企業の破綻というのは、いろんなところに影響を与えてしまう。例えば、公的管理となると株価はゼロになってしまいますから、当然、株主は全損です。また従業員も、破綻によって将来の見通しがまったく立たなくなってしまいました。さらにお金を預けていただいていたお客様や融資先のお客様にも多大なご迷惑をおかけしてしまった。こうした事態を目の当たりにした恐ろしさが、「企業にとって最も大切なのは持続的成長だ」という思いを深く胸に刻みつけることになったのです。では、そのサスティナビリティを担保するものは何かといえば、「企業の存在意義」です。企業の一丁目一番地といえる基本の事業を世の中から常に必要とされるように維持し、さらには変革していかないといけない。この存在意義を大切にしつつ、持続的な成長を図っていく、ということです。