無礼な態度が下げる仕事の質、組織への忠誠心……

映画やドラマの影響なのか、アメリカのオフィス風景と言えば、ラフな格好で、上司と部下もタメ口で、気さくに冗談を言い合うイメージが強い。

大島 武『Think CIVILITY「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である』(東洋経済新報社)

堅苦しい礼儀よりも本音のやりとりを重んじる文化――そんな私の偏見をよそに、礼節の重要性を学術的に分析したアメリカ人研究者の著書が刊行された。「『職場の無礼さ』の研究、20年の集大成!」「全米で話題の『礼節の科学』」のオビも効いている。礼儀・礼節の本家は日本だろうという自負もあり、上から目線で読んだが、興味深い内容だった。

本書は礼節を単にビジネスマナーの問題と捉えるのではなく、企業のパフォーマンスに重大な影響を及ぼす要素として論じている。たとえば顧客体験として、レストランで支配人が従業員を汚い言葉で叱責する場面を見てしまったら、たとえ料理が美味しくても、その店のイメージは下がるだろう。無礼な態度によって生じた悪い記憶は刺青のように脳に焼き付くのだという。