1人でも立ち上げやすい喫茶店は、3年以内にその半数が倒産するという。なぜ、「念願のカフェ開業」はうまくいかないのか。経済ジャーナリストの高井尚之氏は「こうした店はロマンを追求するあまり、収支計画が甘い場合が多い。“カフェ”に対する消費者意識をとらえた工夫が必要だ」と指摘する——。
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「喫茶店」の倒産総数は、前年同期より35%増

9月13日、「喫茶店の倒産が年最多に迫るペース、消費増税後はテイクアウトと競合も」という記事が発信された。東京商工リサーチが、自社の調査データを基に実情を解説した記事だ。

それによれば、2019年1月から8月の「喫茶店」の倒産総数は42件(前年同期31件)で、前年同期比35.4%増と大幅に増加。「このままのペースで推移すると、過去20年で年間最多を記録した2011年の70件に迫る勢いだ」という。

ちなみに現在、メディアは「カフェ」を使うことが多いが、喫茶店もカフェも似た意味で使われることが多く(厳密には違う)、各種調査では今も「喫茶店」が用いられる。

また、「新規開業パネル調査」(2011~2015年。日本政策金融公庫調べ)によれば、飲食店・宿泊業の廃業率は「18.9%」となっており、全業種平均(10.2%)に比べて倍近い。同調査は、ホテルや旅館など宿泊業(調査時期的に“民泊”例は少ない)を含む数字だが、実質は数の多い飲食業を反映した数字といえそうだ。

喫茶店(カフェも含む)や飲食業への厳しい数字が目立つが、筆者はこれが特段珍しい現象とは思わない。もともとカフェは開業も廃業も多い“多産多死の業態”だ。最近では禁煙化の波に押され、スターバックスに代表されるような大手コーヒーチェーンの進出も受けて町の喫茶店は目に見えて数が減っている。「3年もつ店は半数」ともいわれるほどに厳しい業界なのだ。

一方で、“多死”である分、若手も次々に参入している。長年続くカフェ人気や、コーヒーブームの現状と事例を紹介しつつ、それでも倒産に陥る背景を考察したい。