大腸ガンは大きく結腸ガンと直腸ガンに分けられる。ガン死亡者数の統計は「結腸ガン」と「直腸ガン」でとられている。2006年の死亡者数は4万1056人で、内訳は結腸ガンが2万7317人、直腸ガンが1万3739人。大腸ガンの約30%を直腸ガンが占め、直腸のその先にあるS状結腸ガンまで含めると、大腸ガンの70%を占める。

直腸ガンの症状は「血便」が極めて多くなっている。定期健診を受ける人が増え、無症状で発見されるケースが多いのだが、血便を痔からの出血と思い込んで医療機関への受診が遅れる人がいる。特に痔主で、血便になれている人によりその傾向が強い。「痔と思いたい」のだろうが、やはり怖がらずに受診したほうがよい。検査は問診からスタート。良性か、ガンか。さらにガンの深達度も正確に調べる。そのために、「注腸X線造影検査」「内視鏡検査」「内視鏡超音波検査」に加えて、血液検査で大腸ガンの腫瘍マーカーを調べ、ガン治療へと進む。

治療には「内視鏡治療」「腹腔鏡(ふくくうきょう)手術」「外科療法」「放射線療法」「化学療法」が行われている。精密検査で直腸ガンの状態が詳しくわかると、十分な話し合いの後、最も患者に合った治療法を選択、決定される。

内視鏡治療は肛門から内視鏡を挿入して行う治療。3つの方法が行われている。茎のあるキノコのようなガンには、ループ状のワイヤをかけて高周波電流で焼き切る「内視鏡的ポリペクトミー」。平坦なガンには、ガン部分の下に生理食塩水を注入して浮きあがらせて内視鏡的ポリペクトミーを行う「内視鏡的粘膜切除術」。ガンの直径が2センチを超えていると、ガン部分をはぎ取る方法の「内視鏡的粘膜剥離術」となる。これらの内視鏡治療は直腸壁の最も内側の粘膜にとどまっている早期ガンであることが条件である。

腹腔鏡手術は腹部に3~4カ所小さな孔(あな)と臓器摘出のための4~6センチの孔を開けて行う手術である。ガンの深達度が粘膜の次の粘膜下層まででとどまっているケース、直腸ガンでもS状結腸に近いケースに限られる。

外科療法は自律神経や肛門括約筋といった機能を残す手術が中心。また、直腸ガンがより肛門に近いところにできると、肛門からアタックして直腸壁の最も内側の粘膜内に広がったガンを一括切除する「局所切除術」で対応する。

直腸ガンというと、人工肛門を思い浮かべる人も多いが、昭和50年ごろは約70%が人工肛門になったが、今日では約15%となってきている。

【生活習慣のワンポイント】

食生活の欧米化が大腸ガンを増やしており、その点では直腸ガンも同じ。食生活を見直すとともに、適度な運動が重要である。

(1)野菜を十分に摂取しよう!
 数年前まで食物繊維の積極的な摂取がよいといわれたが、食物繊維が大腸ガンを抑えるという大規模な研究結果はない。そのため、あまり食物繊維のことはいわれなくなった。とはいえ、基本的には積極的に摂取するべきである。

(2)脂肪はほどほどに
 脂肪を多く摂ると胆汁が多く分泌され、ジアシルグリセロールという物質が発ガンを促進させるように作用してしまう。

(3)アルコールは控えめに!
 アルコールは便の中の前ガン物質を活性化させるといわれている。

(4)禁煙!
 大腸ガンのもとといわれる大腸腺腫の発生率をたばこが増加させるといわれている。

(5)運動で肥満改善!
 肥満体質は大腸ガンのリスクが高い。それを防ぐには適度な運動。1日30分のウオーキングを2回はしてほしい。