写真=AFP/時事通信フォト
ロンドンで演説する英国のジョンソン首相(イギリス・ロンドン)=2019年9月2日撮影

先鋭化した首相と議会の対立は議会に軍配

10月末の合意なき離脱(ノーディール)も辞さないという強硬路線で欧州連合(EU)との交渉を有利に進めようとしてきた英国のジョンソン首相であるが、ここにきてその戦略を見直さざるを得なくなっている。英下院によって離脱交渉の実質的な権限を取り上げられてしまったためだ。

7月の就任以前からジョンソン首相は、10月末のノーディールも辞さないというスタンスを堅持することでEUに対して圧力をかけようとしていた。ノーディールを回避したいEUが離脱交渉で譲歩してくることを期待していたのだろう。もっともそうした瀬戸際外交を実現するためには、対立関係にある議会を制する必要があった。

そこでジョンソン首相は、9月中旬から1カ月間、下院を閉鎖するという強硬手段に打って出たが、下院は閉鎖直前に強力な対抗手段で切り返した。次回のEUサミット直後の10月19日までに離脱交渉がまとまらない限り、首相がEUに対して来年1月末まで離脱の期限を申請しなければならないという法律を可決、成立させた。

この動きに対して首相は、解散総選挙のカードをチラつかせて牽制を行ったが、保守党内からも21名の造反が出たため、離脱延期法は成立することになった。議会は首相から離脱交渉の権限を実質的に取り上げることに成功したのである。ジョンソン首相は9月4日に続き9日にも議会を解散する動議を議会に提出したが、反対多数で否決された。

当初、最大野党の労働党は早期の総選挙の実施に乗り気であった。そのため9日に動議は可決され、10月15日にも解散総選挙に向かうという観測が有力であった。しかし労働党の執行部は早期の解散総選挙よりも離脱延期法の確定に優先順位を見直し、9日の動議にも反対することになった。現在では早くて11月末の総選挙が有力視されている。