中国では、学歴や支払い能力など個人の「信用力」を数値化した信用スコアを政府が管理している。さまざまなサービスを利用するとスコアが上がる反面、政府の「リスト」に載ると飛行機が使えなくなるなどの制限があるという。いったいどんな人がリストに登録されるのか――。(後編、全2回)

※本稿は、梶谷懐・高口康太『幸福な監視国家・中国』(NHK出版新書)の一部を再編集したものです。

写真=Imaginechina/時事通信フォト
スマートフォンに表示されたアリババグループの信用スコア「芝麻信用」のロゴ

「芝麻信用」の一般的なスコアはだいたい700点

2019年7月に江蘇省蘇州市、山東省威海市で取材を行ったのですが、IT企業大手アリババグループが展開している信用スコア「芝麻信用」(セサミクレジット)について聞くと、多くのユーザーは異口同音に「芝麻信用のスコアはちゃんとした人間かどうかを示すもの」と答えました。

モバイルインターネットをよく使う都市中産層ならば、違法行為や規約違反を犯さない限りは600点台後半以上のスコアは獲得でき、シェアサイクルやシェアバッテリーのデポジット無料など、用意されている優遇サービスの大半は享受できます。そのため、スコアで差別的な待遇を感じたことはないと言います。まっとうにルールを守っている人間ならば必要十分なスコアは得られる、極端に問題のある人間だけをはじくシステムだと言うのです。

まっとうに生きているだけで評価される、こうした信用システムの構想は中国だけではありません。世界的に注目を集めたのがトークンエコノミーです。ビットコインを中心とした暗号通貨が人気となったあと、中核技術であるブロックチェーンをほかに生かす方法が模索されました。その1つがトークンエコノミーで、エコに配慮した行動をした人やボランティアの参加者にトークン(暗号通貨)を配布することで、人々によき行動をするようインセンティブを与えるというサービスがいくつも構想されました。