かれこれ40年、不眠が続く

書けるうちに書いてしまおうと思うのが、物書きです。書き続けて、疲れたなと思ったら、倒れる。それでうんとお酒を飲んで、寝入って、でも喉が渇いたりして夜遅くに目が覚める。またつらつらと構成などを考えているうち、否応なしに目が覚めてくる。そしてまた書く。すると疲れて、行き倒れのように寝る。生活のローテーションとしては、この感じがいいようなんです。

作家 椎名 誠氏

ただ、いつもすんなり寝入ることができるとは限りません。かれこれ40年、不眠との付き合いが続いています。僕はうまく考えを整理できない人間で、頭のなかでも書いているんです。布団に入って横になっても、頭は動いている。考えるエンジンのスイッチが切れない。すると眠れない。そこに焦りが入ってくるわけです。「明日から旅行なのに、用意もできていない、原稿も書き終わっていない」なんて。物書きはそう悶え苦しんでいる人が多いですね。

布団に入っても頭の回転が緩まないときは睡眠薬を飲みます。最初は5、6種類の睡眠薬と抗不安薬を、医者に言われた通り全部飲んでいました。今はこれまでの“人体実験”の成果で自分に合う量がわかっていますからね。量は減っています。それでも足がふらついたり、おかしくなっちゃいますから、習慣にするのはよくないなと。