加齢とともに記憶力は落ちるといわれている。だが脳の可能性は無限大だ。今回、「最高齢」で難関資格に合格した人たちに、その学び方を聞いた。第2回は「65歳で司法試験」の吉村哲夫さんだ――。(全4回)

ノートは「アウトプットの練習」として使う

吉村哲夫さん(69歳)は、2014年に同年最高齢の65歳で司法試験に合格。現在は故郷である福岡市内の事務所で働く「新人弁護士」だ。

1974年に九州大学を卒業後、福岡市職員となり、東区長まで務めた。58歳のときに、吉村さんは2年後に迫った定年後の「第二の人生」を考え始める。余生ではなく、まったく新しいキャリアを歩みたい、一生働ける価値を身に付けたいと考えた吉村さんは弁護士を志し、働きながら勉強をスタート。退職後の11年に京都大学法科大学院(ロースクール)に合格。入学後は、量・質ともに想像以上の勉強量に追われながら、14年に司法試験を突破した。

吉村さんは、「丸暗記の勉強法では駄目。むしろ、記憶が邪魔をすることもある」という考えにたどり着いたという――。

記憶力が衰えても、司法試験は受かる

忘れない勉強法があるなら、私が教えてほしいくらい(笑)。ただ、1つ言いたいことは、「記憶力」にどれだけ意味があるのかということです。

たしかに記憶力がいいほうが、資格の勉強に都合がよく見えるし、忘れない勉強法が魅力的なことも理解できます。でも本当に大事なのは、記憶力よりも総合的な理解力や判断力でしょう。そして人間の理解力や判断力は、20代、30代、40代と、どんどん高まっていくものだと思います。私は70近いですが、50代の頃よりもいろんな意味で理解力や判断力が身に付いていると実感しています。