日本企業における女性の賃金は、入社時点から男性の86%程度におさえられている。その後も伸び悩むため、女性がキャリアを積むことが困難な時代も長かった。日本企業はそうした差別待遇を放置してきたが、大和総研の菅原佑香研究員は「放置を続ければ、今後は企業の事業存続のリスクに発展しかねない」と警鐘を鳴らす――。
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G7の中で男女賃金格差が最も大きい日本

日本での女性活躍の取り組みは、最近になって始まったことではない。政府が、法人・団体等における課長相当職以上の者などの指導的地位に占める女性の割合を、2020年までに少なくとも30%程度とする目標を掲げたのは、今から15年以上も前の2003年6月のことだ。

安倍晋三内閣が2018年6月15日に閣議決定した「未来投資戦略2018」でも女性の活躍を、さらに拡大させることが明記されるなど、女性の参画が長年にわたって推進されてきた。2016年には女性活躍推進法が施行され、また、企業における「働き方改革」の取り組みが積極化するなど、仕事と家庭の両立を支援する自主的な企業の取り組みも進んでいる。

女性活躍の取り組みが積極化して来たが、それでも諸外国に比べると依然として不十分である。世界経済フォーラム(World Economic Forum)の“The Global Gender Gap Report 2018”(2018年12月)によると、各国の男女格差を測ったジェンダー・ギャップ指数において、日本は144カ国中110位である。この指数は経済、教育、政治、保健の4つの分野のデータから作成され、日本は特に政治と経済において男女の格差が大きい。

管理職比率(管理的職業従事者に占める女性の割合)は2017年で約15%と10年前から4%ポイントほど上昇しているが、水準で見れば依然として低い。所得水準の男女差も大きい。図表1は主要先進国(G7)のフルタイム労働者の男女間賃金格差を示したもので、日本はG7諸国の中で賃金格差が最も大きい。