韓国政府は「報復措置」として反発している

安全保障上の輸出管理で優遇措置を取っている、いわゆる「ホワイト国」(正式には「グループA」)から、韓国を除外する政令が8月7日、公布された。8月28日に施行される。

写真=EPA/時事通信フォト
韓国の文在寅大統領(韓国・ソウル)=2019年8月2日

日本政府はこれに先立つ7月4日に、半導体製造などに使うフッ化ポリイミド、レジスト(感光材)、フッ化水素の3品目について、輸出手続きを厳格化する措置を取っていた。兵器転用などの恐れがある化学品などに韓国政府の輸出管理や運用に不十分なものがあったというのが理由で、韓国政府に管理体制の見直しなどを求めてきた。

しかし改善の意思が示されなかったことから、今回の「ホワイト国」除外に踏み切った。食品や木材を除くほとんどの品目で、経済産業省が個別審査を求めることができるようになる。

日本政府はあくまで「安全保障上の貿易管理の問題」だと繰り返し強調しているが、韓国政府は徴用工問題に関する韓国大法院(最高裁)判決などへの報復措置だとして強く反発。韓国国内で日本製品の不買運動などを繰り広げている。

経産省幹部「韓国政府の主張は事実と全く違う」

「今後起こる事態の責任は全面的に日本政府にあることをはっきり警告する」

文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、安倍晋三内閣が「ホワイト国」除外を閣議決定した8月2日、臨時閣僚会議を招集して、強い調子で日本を非難した。「明白な経済報復だ」と指摘、「人類の普遍的な価値と国際法の大原則に違反する」とした。

そのうえで、「この挑戦をむしろ機会と捉え、新しい経済の跳躍の契機とすれば、われわれは十分に日本に勝つことができる」「勝利の歴史を国民とともにもう一度つくる。われわれは成し遂げられる」と韓国国民に訴えた。

過剰とも思える反応だが、「ホワイト国除外」はそれほど韓国経済に大打撃なのだろうか。

経済産業省の幹部はこう指摘する。

「韓国政府はあたかも日本が禁輸措置に踏み切ったかのように言っているが、事実は全く違う。あくまで安全保障上の措置で、日本からの輸出手続きが厳格化されると言っても、他のアジア諸国と同等の扱いになるというだけの話。経済に深刻な影響が出ることはあり得ないし、世界のサプライチェーンが動揺することもない」

そう韓国経済に大打撃だとする文大統領ら韓国政府要人の主張を否定する。実際、経産省はさきに輸出手続きを厳格化した3品目について、すでに輸出許可を出しており、正規の利用目的の製品については、輸出は滞っていない。