盛衰激しいネットビジネスの世界で、まるで走るペースが乱れない中長距離ランナーのように、弛まぬ成長を続けている会社がある。「おとりよせネット」や「レシピブログ」など、女性向けのライフスタイルメディアを展開するアイランドだ。目先の利益は負わず、独自の立ち位置を貫き、熱量の高い顧客をつかんでいる。中には、10年近くも儲からなかったビジネスを地道に続け、花開いたケースもあるという。ゆっくり、じっくり、ビジネスを育てる秘訣を粟飯原理咲社長に聞いた――。
写真=市来 朋久

ありそうでなかった、あったらうれしいサービス

私がサービスを立ち上げたのは、2003年のことでした。「みんなの暮らしをもっと楽しく、わくわく、心地よく」をコンセプトに、ありそうでなかった、あったらうれしいウェブサービスをつくりたい。そういう思いで、主に女性向けのライフスタイルメディアをつくってきました。

事業の大きな柱は2つあって、1つが食品ECサイト紹介事業で、全国のおいしいお取り寄せの情報ポータルサイト「おとりよせネット」です。もう1つが料理インフルエンサーによるマーケティング事業とプロモーション事業です。これは、日本最大級の料理ブログのポータルサイトの「レシピブログ」と、日本最大級の料理インスタグラマーコミュニティ「フ―ディーテーブル」(旧「クッキングラム」)からなっています。

商品カートがない、口コミだけが載っている

最初に始めた事業は、「おとりよせネット」でした。現在、掲載商品が5000品以上あって、年間640万人にご利用いただいています。「おとりよせネット」は商品の口コミのデータベースで、アイランドは販売には直接タッチしません。商品カートがないお取り寄せ情報サービスと説明したほうがわかりやすいかもしれません。

ユーザーが「おとりよせネット」に掲載された商品情報とユーザー評価などを参考にして、ショップから直接商品を取り寄せるシステムです。ショップに支払っていただく商品掲載料が、主な事業収入ですが、初めて掲載する商品は無料で、2品目から有料にしているのが特徴です。こういうシステムにしているのは、まずショップとユーザーとが出会って、両者が信頼し合える関係になることを大切にしたい、と考えているからです。

このサービスの根本にあるのは、「おとりよせネット」はユーザーの生の声を尊重する口コミのデータベースである、ということです。ですから、ショップから「口コミ情報からこの一文を削ってほしい」という要望があっても、受け付けていません。「ユーザーさんの素直な気持ちですので削除できません」と説明し、それで納得してもらえないときには、「商品の掲載を削除しましょう」とお伝えしています。