どうにかならんか、民主党! ブレる菅首相、駄々をこねる小沢一郎、政策の一貫性まるでなし。そう嘆いても、しかし世の中がよくなるわけではない。民主党に言いたい。この再建プランを丸呑みしたらどうか、と。絶対、世の中は変わる、よくなる。

 

5.「共通番号制」の導入

社会保障財源としての消費税率を上げることに、国民の理解は少しずつ深まっている。ムダを削減しても、国の赤字を相殺するのは不可能なことが明確になってきたからだ。だが、税率を上げる前に、もう一つやっておくことがある。納税の不公平感をなくすことだ。

40代以上の読者なら「ク(9)ロ(6)ヨン(4)」という言葉を覚えているだろう。課税対象の捕捉率がサラリーマンは9割、自営業者が6割、農業などの従事者は4割という意味だ。この言葉は死語になりつつあるが、職種による税の不公平感は今も残る。それを是正する「装置」が共通番号制だ。

「共通番号」は以前「納税者番号制」「国民背番号制」などと言われたものと同類だ。国民一人一人に番号を与え、そのもとに所得、年金、病歴などの個人情報を集約させる。

その結果、濃やかな行政サービスができるというのが売りだが、政府にとって最大のメリットは、複数個所からの収入がある人の所得を「名寄せ」して、脱税を見破ることだ。その結果、税収増が見込める。

自営業者の中にはありがたくないと思う人も多いだろう。かつて1980年、少額貯蓄非課税制度(マル優)の仮名口座防止のために「グリーンカード制」の導入が決まったが、猛烈な反対運動が起きて廃止に追い込まれたことがある。

だが、ここで忘れてならないのは、民主党を政権にまで押し上げた原動力は、地域にしがらみのないサラリーマン層だったことだ。共通番号は、その層の理解は得やすいので、党の本来の支持基盤との関係を再構築することが可能になる。「公平な税制」で国民運動を起こせば、消費増税に向けた国民の理解も進むかもしれない。

共通番号の導入は簡単ではない。個人情報が漏えいする危険と背中合わせだからだ。「尖閣ビデオ」の漏えい、警視庁資料の流出など、最近は行政の情報管理の拙さを示す事態が次々に明るみに出ている。

世界に目を向けても米政府の情報が、内部告発サイト「ウィキリークス」から漏えいしている。そんなときに政府に情報を一元管理させていいのか、という懸念の声は当然挙がるだろう。専門家も漏えいを100%防ぐのは不可能だと認めている。

共通番号を導入するなら、行政が個人情報を管理するのではなく、自分の情報を、行政が必要なときに限り利用することを許すという発想の転換が必要だ。いつ、どの役所が自分情報を閲覧したかを把握できるような仕組みにしなければならない。そして政府・民主党が国民から「自分の情報を任せても大丈夫」と信頼に足る存在に近づくことも制度実現のカギを握る。

 

6.あえて改憲を論じる

民主党は綱領を持たない。それゆえ基本政策が定まっていないと批判を受ける。政権政党として、どんな国をつくろうとしているかがわかる骨太の綱領を固める議論を本格化させる必要がある。しかし、その作業は地味で国民にアピールしない。

ここは思い切って憲法論議に踏み込んだらどうか。護憲派を多く抱える民主党はこれまで、憲法論議には消極的だった。09年の衆院選マニフェストでは末尾に「国民の自由闊達な憲法論議を」と書いているだけだ。

一方、自民党側は現政権を「左派政権」と決め付け、安倍晋三元首相ら保守的な自主憲法制定派が再び台頭しつつある。それを逆手に取る意味で、憲法論議に打って出るのだ。

ただし多くの自民党議員が志向する九条改正先にありきの改正ではなく、第三章「国民の権利及び義務」、第八章の「地方自治」などを中心とした議論を優先させたほうがいい。「環境権」など、今の憲法には盛り込まれていない新しい権利、生命倫理などについての条項を盛り込むという議論は、国民には新鮮な印象を与えるのではないか。また、条文が4つしかなく内容の乏しい「地方自治」を全面改訂して「地域主権」の考えを盛り込むアプローチもおもしろい。要は「民主党らしい」憲法改正論議を提起するのだ。