大勢の前で上手に話すには、どうすればいいか。事業戦略コンサルタントのリップシャッツ信元夏代氏は「どんなメッセージでも『20字以内』に絞り込むことはできる。それを前提に言葉を削ぎ落とす必要がある」と指摘する――。

※本稿は、リップシャッツ信元夏代『20字に削ぎ落とせ ワンビッグメッセージで相手を動かす』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/LightFieldStudios)

結局、なにが言いたいの?

スピーチやプレゼンで言いたいことが伝わらないのには、必ず理由があります。それもどれもがふだん気づかず、無意識にやりがちなことなのです。

よくあるのが、一生懸命伝えようとすればするほど「伝わらない」というケースです。どうすれば間違いなく伝わるのか、ブレイクスルーメソッドの基本的なコンセプトを説明していきましょう。

私自身がパブリックスピーキングを学ぶときに、コーチを買って出てくれたジャニスから、まず徹底的に指導されたのが、メッセージをひとつに絞ることでした。

「ナツヨ、それで結局、なにがいいたいの? スピーチの中にメッセージが2つあるわ。どちらが伝えたいこと?」

自分ではいいたいことを詰めこんでいたつもりでしたが、実際に指導されたのは、要らないことを「削ぎ落とす」作業でした。どんなスピーチでもプレゼンでも、この1点が聞き手に伝わって欲しいというメッセージがあるものです。

その「たったひとつの大事なメッセージ」をブレイクスルーメソッドでは、ワンビッグメッセージ(One Big Message)と呼んでいます。言いたいことをたったひとつのワンビッグメッセージに絞りこむことで、格段に相手に伝わりやすくなるのです。

しかも大事なのは、ワンビッグメッセージを「20字で語る」ことで、より明確に、意図したとおりに伝わるのです。20字におさめるなんてとうてい無理! とお思いかもしれませんね。もちろん、20字ですべてのスピーチ/プレゼンが完了するわけではありません。聞き手に最も刺さってほしいワンビッグメッセージを20字に凝縮する、ということです。

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なぜ20字なのか。メッセージは相手に解釈の余地を与えてしまうと誤解の元になります。長い言葉で語るほど、解釈の余地は広がってしまいます。それを避けて、明確なメッセージを相手の記憶にしっかり焼きつけるためには、違う解釈をしようがないくらいにまで削ぎ落とした短いフレーズで伝えることです。

人間はだいたい15字から20字程度のフレーズが覚えやすいといわれています。英語のスピーチでは10語にまとめることを、スピーチコンテスト世界チャンピオンのクレッグ・バレンタインは提唱しています。英語であれば、10語にまとめるのがベストの長さになるのです。

しかしながら英語と日本語では違いがあり、英語を日本語訳にすると、およそ英語のワード数の倍になるのがふつうです。例をあげましょう。

I am Japanese(3語)→私は日本人です(7字)
I like these shoes(4語)→私はこの靴が好きです(10字)
Have you ever been to this country?(7語)→この国に行ったことがありますか?(15字)