米国も韓国の北朝鮮に対する「支援」に懸念

7月1日、経済産業省は、韓国向け輸出管理制度の見直しを発表した。今回の措置の理由は、わが国の韓国に対する信頼関係が著しく悪化し、安全保障上、軍事転用が可能な資材の輸出を厳格に審査する必要があるからだ。

具体的な内容は2つある。まず日本政府は、7月4日から半導体などの製造に使われる、フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の3品目に関して包括輸出許可制度の対象としないことを決めた(リスト規制)。そのため、今後は個別審査が必要となる。審査には90日程度の時間を要するといわれている。

韓国の文在寅大統領は7月18日、与野党5党の代表と協議し、日本の対韓輸出規制の強化について「不当な経済報復」だとして即時撤回を求める考えで一致した。(写真=EPA/時事通信フォト)

2つ目に、政府は信頼関係の悪化を理由に韓国に対する“ホワイト国”の認定を外し、適切に輸出を管理する方針を示した。ホワイト国の認定が外れると大量破壊兵器に転用される恐れのある品目は経済産業省の判断によって個別審査が必要となる。

これを受け韓国政府は米国に、日本政府の措置は世界に混乱をもたらすと懸念を表明した。それに対し米国は、韓国の主張に同調も否定もしていない。その背景には、米国自身も韓国の北朝鮮に対する非公式の支援に懸念を持っていると見られることに加えて、わが国の制度厳格化の影響は対応可能という判断があると考えられる。

韓国の株価は相応の安定感を維持している

わが国による輸出管理制度の厳格化に対して韓国は、米国をはじめ国際世論に自国の窮状を訴え事態を改善しようとかなり焦っているようだ。康京和(カン・ギョンファ)外相が、電話会議でポンペオ米国務長官に「韓国の企業だけでなく、グローバルな供給体制を混乱させ世界経済に無視できないマイナスの影響を与える」と強い懸念を伝えた。

ただ、今のところ、米国政府の要人からは、明確に韓国の主張を支持する発言などは出ていない。韓国の文政権が期待したような、米国の韓国サポートのスタンスは見られていないのが実態のようだ。むしろ、米国の専門家の間では、「米国政府も、韓国の北朝鮮に対する非公式な支援を憂慮する姿勢もあった」との見方が多い。

わが国の制度見直しが韓国に与える影響は、短期、やや長めの時間軸の2つの視点で考える必要があるだろう。短期での影響については、すぐに出るとは限らない。すでに韓国の企業は自助努力を重ね、影響の回避に取り組んでいる。

7日にはサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長が来日し、当面の生産に支障が出ないよう資材を確保した。7月中旬の時点では、「思ったほど、日本政府の対応の影響は大きくないかもしれない」との楽観から、韓国の株価は相応の安定感を維持している。