自分は将を目指すべきか。それとも参謀に徹したほうが大成するのか――。自己分析の手助けとなる「適性診断テスト」を受けてみよう。

猪突猛進型と完璧主義者

「トヨタ自動車を創業した豊田喜一郎と、『トヨタの大番頭』を自任し、戦後の倒産の危機を救った石田退三。このコンビに見られるように、大事業をなす組織には必ず息の合った将と参謀の姿があります。中小企業から大企業まで、大勢の経営者を見てきましたが、将の器と参謀の器とは、明らかに気質が違うものです」

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アドラー心理学カウンセリング指導者の岩井俊憲氏はこう切り出す。では、その違いはどこにあるのか。「ひと言で言うと、将は猪突猛進型の『ドライバー』。人間機関車のようなタイプ。対する参謀は、自己抑制的な『コントローラー』で、完璧主義者という特徴があります」と岩井氏は分析する。アドラー心理学流に言うと「ライフスタイル」の違いだ。平素はともかく、「ここぞ」というときに、その人特有の思考・感情・行動のスタイルの違いが表れる。

岩井氏によれば、将の器を持つ人は、多くの人をまとめ上げ、大きな成果を発揮できたときに充実感を覚える。「私は優越していなければならない」という自己理想を持っており、その理想に向かって突き進むバイタリティーに溢れている。「こうした将の器を目指すなら、最も必要なのは決断力」だと岩井氏は強調する。「例えばJリーグを創設した川淵三郎さんは、『時期尚早』『前例がない』と抵抗する勢力を押し切ってJリーグを立ち上げた。前例の有無など意に介さない確固たる決断力が将には欠かせない」。

だが、何の根拠もなく将が猪突猛進しては組織としてリスクが大きすぎる。勢いに任せて走りがちな将を制するのが参謀の役目だ。決断に必要な材料を収集、分析し、戦略を立案する力が参謀には求められる。さらに、必要とあらば、耳の痛いことも直言してくれる参謀役がいてこそ、将は存分に力を発揮できる。「参謀役にふさわしいのは、相手の期待を察知する能力に長け、忠実に応えようとする人。広い分野で自ら人を束ねるより、得意分野で秀でることを望む人に多い」(岩井氏)。

こうした将と参謀が互いの強みを発揮できると、組織としても大きな事業を成し遂げることができる。参考にしたいのがホンダ創業者・本田宗一郎と、その名参謀と言われた藤澤武夫だ。生粋の技術者であった本田を、経営手腕に優れた藤澤が支えることで、「世界のホンダ」を築き上げていった。