国立小学校の「お受験」は、関西では8月下旬から、関東では9月半ばから始まる。最先端の教育方法が積極的に採用されるうえに、学費は無料だ。このため倍率が50倍を超えるケースもある。どんな子が合格するのか。フォレスト幼児教室の武田澄子室長に聞いた――。

全国に70校しかない国立小学校とはどんな学校か

国立小学校とは、国立教育大学や国立大学教育学部の付属小学校のこと。2018年度時点で全国に70校ある。全小学校の0.35%と、圧倒的に少ない。新たな教育の実験の場、教員を志望する大学生の研修の場として設立されており、そのため研究発表会などが頻繁に開催される。

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ペーパーテスト、行動観察、面接などによる入学試験があり、1、2回の抽選がある学校も多い。受験倍率は数十倍という狭き門だ。

学費は公立同様で無料。にもかかわらず、質の高い教育が受けられる環境が整っているのが国立小学校の魅力だと、小学校受験のトレンドにも詳しい、フォレスト幼児教室の武田澄子室長は語る。

「新しい教育技術を研究し、公立小学校のお手本となることが国立小学校の目的。当然、公立小の教師や教育学部の大学生の指導的な役割を果たせるベテランで指導力の高い教師が多い。教科担任制を採っている学校も多く、各分野のオーソリティーともいえる先生が大勢います。加えて子供たちも入試という選別を経ているので、基本的に学力が高くみな落ち着いています。公立小学校でよく問題となる学級崩壊、といった心配がありません」

また、教育実験校という位置づけなので、体験学習や外国語教育、いじめ対策など、実験段階にある最先端の教育方法が授業に積極的に取り入れられているのも魅力の一つだ。

「児童の親の学歴が高く、教育に対する意識も高い点では私立小学校と同様ですね。子供だけでなく、親同士も他の保護者との関わりの中で、いろいろな刺激を受けることもできるんです」

PTA活動が活発で共働き家庭だと有休をすぐ使い切るケースも

だが、一方でデメリットもある。国立小学校の数自体が少ないため、近所に存在することは稀。電車やバスで通うケースが多く、通学に時間とお金がかかる。家の近所に同級生もいない。

また、学校行事などに親が駆り出される機会が多く、PTA活動も活発だ。共働き家庭だと1学期で有給休暇を使い切ってしまうケースもあるという。

武田室長は、さらに次のような注意点を指摘する。

「ベテラン教師が多いので、みな自分独自の授業を行う傾向があります。教科書を一切使わない先生や、宿題を出さない先生も。国立に子供を通わせる親御さんの中には『担任が替わると学校が替わったようだ』という人もいます。当然、わが子との相性の当たり外れがあるんです。また進学指導も私立には及びません。低学年のうちは成績表もない学校もあり、わが子がどのレベルにいるかもわかりません。実験的な授業が多いために、教科書を使った勉強は家庭で、ということも。結果的に、塾に通わせるなど親のフォローが不可欠です」

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