「通夜・告別式は近親者のみで行います」。ここ10年で葬式の主流は、こうした家族葬になりつつある。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳氏は「背景にあるのはコスト意識のようですが、実際には家族葬は従来の一般葬よりも割高になります」という――。
2018年4月に実施された野中広務さんの「お別れの会」。(撮影=鵜飼秀徳、以下すべて同じ)

「通夜・告別式は近親者のみで行います」という文言の背景

あなたは最近、勤務する会社の上司、もしくは同僚の親の葬式に出席したことがあるだろうか。

中堅以上の社員であれば、若手の時代に上司の親の訃報を受ければ、受付などの手伝いをしたことがあるのではないか。かくいう私もかつて、上司の葬式に何度か参列し、普段は厳格な上司が涙を見せたり、家族を紹介してくれたりして、「部長も人間らしいところがあるんだな」などと驚いたものだ。

しかし、ここ数年はどうだろう。特に東京で働く会社員は、会社がらみの葬式に出たことが、とんとなくなったのではないか。会社の掲示板の訃報通知には、昨今、決まってこんな文言がさらりと添えてある。

「通夜・告別式は近親者のみで行います。香典や供花は謹んでご辞退申し上げます」

こう書かれていれば喪主が、参列者を集めない「家族葬(密葬)」もしくは、葬式を実施しない「直葬」のいずれかを選択したことを意味している。

国会議員や大企業のトップさえも葬式をやらなくなった

私は1年前、東京都千代田区にある大企業(連結社員数約5500人)の3年間の訃報通知をカウントし、解析した。すると、約95%が「家族葬」か「直葬」であった。たしかに、私が現役時代に葬式に参加した最後は2006年頃だったように思う。

新聞の訃報欄にも変化がある。やはり、「通夜」および「葬儀・告別式」の日取りや場所が書かれておらず、かわりに「告別式は近親者で行う」との文言が添えられているのだ。

大手紙の訃報欄に掲載される故人は、国会議員や文化人、大企業のトップなどを経験した著名人である。「公人」ですら、会葬者を集めた葬式をやらないようになっているのだ。支援者が多数存在する政治家までもが、いまでは葬式をやらない。

2018年1月、「影の総理」と言われた元官房長官の野中広務さんが亡くなった。私も政治記者時代、野中さんにはお世話になっていたので葬式に参列したかったが、家族葬であった。3カ月後、「お別れの会」が開かれ、そちらに出席した。