子どもに最善の道を夫婦で真剣に問い直せ

まず妻の考えを丸呑みして、具体論で現実を直視させよ!<br><strong>作家 山本一力</strong>●1948年、高知県生まれ。会社員を経て、作家に。2002年『あかね空』で直木賞受賞。著書に『研ぎ師太吉』『江戸は心意気』『家族力』など多数。
まず妻の考えを丸呑みして、具体論で現実を直視させよ!
作家 山本一力
1948年、高知県生まれ。会社員を経て、作家に。2002年『あかね空』で直木賞受賞。著書に『研ぎ師太吉』『江戸は心意気』『家族力』など多数。

公立か、私立かという議論の前に、まず親としては「子どもに対する愛情とは何か?」ということを、父親と母親は真剣に問い直すべきだ。そのうえで、子どもが本来身につけるべき学力とは何か、いまの年齢のときに身につけるべき能力とは何か、子ども自身はどう考えているのかを両親がしっかり考え、その結果として「私立がいい」ということであれば、お受験でも何でもどんどんやればいい。

だが、単にいい高校、いい大学に入れるための条件闘争としての私立受験だとすれば、それは論外だ。親が率先して「塾へ行け」と子どもを追い立てて、その費用が大変だと母親がパートに出て、家の中では子どもと親が接する時間が全然ないという家庭も多いようだ。そんな環境が本当に子どものためになるかどうかは、誰が考えてもわかること。

ところが受験を前にすると、特に母親は少しでも偏差値の高い学校のほうが子どもには有利に違いない、誰もがうらやむようなブランド私立校に入れて、友達に自慢したい、そんな夢ばかりが膨らんで、合格するための小賢しい方法論を子どもに身につけさせることに血道を上げる。これでは子どもに“生きていく地力”をつけさせることはできない。

私は受験にも私立にもまったく興味のない男だが、長男も次男も現在私立中学に通っている。行かせた理由は簡単で、長男が自分で「この学校に行きたい」と言い出したこと、そして私自身がその学校の先生方と接してみて、「子どものためだけを考え、ダメなものははっきりダメと言える先生が集まっている学校だ」と感じたからである。