正直スッキリした気持ちです

「もともとやりたいことがないまま就職したのが悪かったんです。次はもっと興味が持てる仕事を探したいですね」

そう語るのは、2019年都内の私立女子大を卒業し、4月に新卒入社した会社を出社1日目に退職した高岩真里さん(仮名・22歳)だ。なんと彼女、入社当日わずか3時間で会社に退職を伝え、そのまま帰宅したという。何があったのか。

出社1日目に退職した高岩真里さん(仮名・22歳)。「社員が妙に馴れ馴れしくて……」

その発端は就職活動時に遡る。彼女はいろいろな業界を見たというが「面接や筆記試験のために対策しなきゃいけないと聞いてめんどうくさいと思った」という理由で各企業や業界の研究もせず、たまたま内定をもらったアパレル店にスタッフを派遣するアウトソーシングを担う会社に就職した。だが……。

「採用パンフレットでは店舗向けにアウトソーシングの派遣をする側の企業なんだなということくらいしか記憶に残らなかったんです。でも、内定者研修に参加し、実態は自分が派遣される側になって働くということがわかりました。想定外でした」

さらに、入社前とのギャップに加え、社員の性格にも違和感を覚えた。

「内定式では、社員の気さくさに惹かれたのですが、妙に馴れ馴れしいというか……。人事の人は酒をガブガブ飲むし、タメ口。思っていたのと違うし、内定式では理由もなくチームで風船を積み上げるゲームをやらされるし、どんどん入社する気が削がれていきましたね」

卒業前の3月に実際に店舗に派遣される研修をした高岩さん。彼女の退社の意思はより高まっていく。

「管理の仕事かなと思ったら、販売スタッフとまったく一緒。これじゃアルバイトや派遣と一緒じゃんって絶望しました。私は社員として、陳列や入荷、店舗売り上げを任されると思っていたので。上司からは販売スタッフから役職が上がったら管理する側になるよと言われましたが信用できなくて……」。また、研修中や派遣先を含め、社員は関西人が多く、笑いをとって話さなければならないことにもストレスが溜まっていったという。

こうして1カ月程度の研修を経て迎えた入社式の日、高岩さんのモチベーションはゼロになっていた。

「入社式のあとの新入社員向けの研修に入る前に別室に上司を呼び出しました。『すみません、やっぱり辞めたいんですけど』と単刀直入に伝えました。『やりたいことが諦められなくて』と適当に理由を用意して嘘をつきました」

多少意思の確認をされたというが、意外にもあっさりと退社は認められたという。高岩さんが社員証や社員向け資料を返却し、本社ビルを出たのは、出社から3時間後のことだった。