「日朝首脳会談」の思惑はもろくも崩れ去った

夏の参院選に向け、永田町が騒がしい。

いまの国会が6月28日の会期末で閉会した場合、参院選は7月4日公示、21日投開票の日程で行われる見通しだ。安倍首相があわせて衆院を解散する「衆参同日選挙」との見方が出ており、与野党の動きに拍車がかかっている。

与野党の最大の関心は、安倍首相がいつどうやって衆院を解散するかである。

安倍首相は衆参同日選挙に勝ち、憲法改正まで成し遂げるため、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との「日朝首脳会談」を実現させようとしていた。だが、その思惑はもろくも崩れ去った。

2019年6月4日(写真=AFP/時事通信フォト)

「条件を付けずに」と大きな方向転換をはかったが……

今年2月、ベトナム・ハノイで行われた2回目の日米首脳会談の後、安倍首相は「今度は私の番」と明言した。5月に北朝鮮が弾道ミサイルを連続して発射した際には、「私自身が条件を付けずに向き合わなければならない」と無条件で日朝首脳会談に臨む決意を示した。これまで安倍首相は「拉致問題の解決に資する会談としなければならない」という姿勢を示しており、大きな方向転換は関係者を驚かせた。

安倍首相は、史上初の日朝首脳会談を実現して拉致被害者を帰国させた小泉純一郎・元首相のように、自ら北朝鮮外交の大きな檜舞台を作り上げ、その勢いに乗って衆参同日選に打って出ようと考えていた。

ところが、肝心要の金正恩氏が態度を硬化させてしまう。北朝鮮が6月2日夜、国営メディアを通じて日朝関係について次のような声明を発表したのである。

「安倍一味はツラの皮がクマの足の裏のように厚い」

「まるで日本政府がわが国に対する協議の方針を変えたかのように宣伝し、しつこく平壌(ピョンヤン)への門をたたいているが、われわれへの敵視政策は何も変わっていない」
「前提条件のない首脳会談の開催などとぬかす安倍一味はツラの皮がクマの足の裏のように厚い」
「あれこれ言っている安倍一味はずうずうしい。過去の罪悪をきれいに清算して新しい歴史をえがく決断を下すべきだ」

北朝鮮の声明では謝罪や賠償を求める姿勢も改めて示された。

安倍首相が前提条件を付けずに日朝首脳会談の実現を目指す考えを示していることに対し、北朝鮮の国営メディアが直接反応を示したのは、これが初めてだった。