社内不倫、セクハラ、パワハラ、不正……社内の不祥事に対して、企業はどう対応しているのだろうか。厳罰が下されるケース、はたまた揉み消されてしまうケースは何が違うのか。製薬業人事担当役員、食品メーカー法務担当役員、サービス業人事担当役員、IT企業人事部長の4人に匿名で話を聞いた――。「プレジデント」(2019年6月17日号)の特集「職場で役立つ『法律』大事典」より、記事の一部をお届けします。

パワハラへの処分は重くなった

――セクハラ、パワハラだけではなく、メーカーの不正検査など社内不祥事が頻発しています。実際にどんな事件が多いのですか?

【食品】すでに2000年初頭からグループ企業を含めて違反行為を告発するホットラインを3カ所設けている。どんな些細なことでも通報してほしいと社員に周知しているが、件数は多いときでも年間30件、平均で20件程度だ。内容はハラスメント関係が約6割、異動や賃金への不満、サービス残業などの労務管理系が4割だ。ハラスメントではパワハラが9割を占め、セクハラは減っている。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/taa22)

【IT】最近多いのは「情報漏えい」。しかも意図的ではなく、お客さんの見積書が入った端末を飲み屋に忘れて紛失したケースなどだ。そもそも飲みに行くときにお客さんの資料を持っていくのは禁じている。間違ってデータをよそに流したり、会社が貸与するスマホやパソコンをなくしたりしたら、過失でも会社に多大な損害を与える。その場合は懲戒解雇もある。他の電機・ITメーカーでも同じだと思う。

【製薬】うちも内部通報窓口のホットラインを第三者の外部機関に設置している。違法行為に気づいた社員が連絡する仕組みだが、件数は年間100件程度。約半分がハラスメントだ。ホットライン以外では労務に関する告発が人事に直接入ることもある。ハラスメントではセクハラよりもパワハラが多くなっている。

――不祥事を発見し、調査・処罰する仕組みはどうなっていますか。実際の処分はどうなりますか?

【食品】就業規則に、こういうことをしたら、こういう処罰を受けますという懲戒規定がある。最も重いのが懲戒解雇、続いて諭旨解雇、降格、減給、出勤停止、けん責だ。懲戒解雇は「刑法その他刑事罰に該当する行為」に限定され、犯罪事実が明白になれば解雇する。まず告発があれば社内の倫理委員会に報告し、調査に入る。いきなり加害者に接触することはなく、被害者や周囲の人間の話を聞いて証拠を固めてから本人に問いただすという流れだ。

【IT】うちも内部通報による告発、監査法人の外部監査、内部監査の3つで発覚する場合が多い。たとえば不正会計が組織ぐるみで行われていることが発覚した場合、懲罰委員会に諮り、迅速に関係者を個別に取り調べる。まず末端の社員から聞き「今だったら情状酌量の余地があるから、誰が首謀者なのか言って」と、やんわりと尋問する。結果として上司の名前が出てくることもあるが、頑なに名前を言うのを拒否する社員もいて、かなりてこずるケースもある。

 

 

「プレジデント」(2019年6月17日号)の特集「職場で役立つ『法律』大事典」は、領収書、副業、残業、情報漏えいなど会社にまつわるトラブルのほか、相続、離婚、弁護士選びといったプライベートな問題解決法についても総力取材を行いました。ぜひお手にとってご覧ください。