塩分のとりすぎは体に悪い。管理栄養士の濱裕宣氏らは「『濃い味』になれていると、塩分をとりすぎている恐れがある。自分の舌のレベルは、『経口補水液』があれば、すぐに確認できる」という――。

※本稿は、東京慈恵会医科大学附属病院栄養部/濱裕宣、赤石定典『はじめての減塩』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

しょっぱいものを食べた後に喉が渇く理由

なぜ減塩が推奨されているのでしょうか。減塩が推奨されるのは、塩分と血圧に密接な関係があるからです。

体には、血液中の塩分濃度を常に一定に保とうとする働きがあります。そのため、食事によって大量の塩分が入り、血液中の塩分濃度が上がると、体は血管に水分を送って塩分濃度をもとに戻そうとします。しょっぱいものを食べたあとに喉が渇くのは、中枢神経が働いて水分を摂るように促すからです。

血液中の水分が増えるということは、すなわち血液の量も増えるということ。心臓はポンプのように収縮と拡張を繰り返して血液を体内に循環させますが、増えた血液量を送り出すためにより強い力が必要となります。これが、血圧が上昇するメカニズムです。

心臓がぎゅっと縮んで血液を送り出すときにかかる圧力の最高値は、「最高血圧」または「収縮期血圧」と言います。一方、心臓が広がって血液が戻ってくるときの圧力の最低値は「最低血圧」または「拡張期血圧」と言います。

高血圧と診断されるのは、最高血圧が140mmHg以上、もしくは最低血圧が90mmHg以上の状態が続くとき。高血圧とは、一時的な血圧の上昇ではなく、血圧が上がった状態が続くことを指します。

心筋梗塞や脳梗塞、脳出血につながる

強い圧力がかかり続けると、心臓の負担が大きくなるのはもちろんのこと、血管にもダメージを与えます。血管は本来、弾力性があるものですが、圧力に対抗しようと徐々に厚く、硬くなっていきます。いわゆる動脈硬化です。

動脈硬化が進み、血液の流れが悪くなったり、血管が詰まったりすると、さまざまな病気を引き起こします。心筋梗塞などの心疾患や、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血などの脳卒中。それに腎不全、大動脈瘤、大動脈解離などのリスクも動脈硬化によって高まります。

平成28(2016)年の人口動態統計によると(図表1参照)、日本人の死亡原因は、1位が悪性新生物(ガン)で、全体に占める割合は28.5%。そして2位が心疾患、3位が肺炎、4位が脳血管疾患(脳卒中)、5位が老衰と続きます。3位の肺炎と5位の老衰は、高齢化社会を反映した結果と言えるでしょう。

『はじめての減塩』より

高血圧と密接に関係するのは、2位の心疾患と4位の脳血管疾患。さらに腎不全、大動脈瘤及び解離の割合を足すと26.8%になり、1位のガンに迫るほどです。

高血圧が怖いのは、こうした病を引き起こすリスクを高めるだけでなく、自覚症状がない点です。血圧が高い状態が続いて、知らないうちに動脈硬化が進んでしまい、突然大きな病となって襲ってくる。そうした可能性があることから、「サイレント・キラー(沈黙の殺人者)」と呼ばれることもあります。