他国に比べて「法整備」の遅れが目立っている

5月17日、参院本会議にて改正道路運送車両法が成立した。この法律は、2020年をめどに高速道路における、自動運転の実用化やその一段階上の無人自動運転のサービスの実用化を目指している。

改正道路運送車両法の成立は、新しい“移動”のコンセプトを目指すために欠かせない。自動運転が実用化できれば、それまで運転が苦手だった人々の移動はかなり楽になる。移動をしながら別のことに取り組むという、これまでになかった生活のスタイルも実現可能だ。

ただ、わが国の自動運転技術開発などへの取り組みは、先進の他国に比べて大きく見劣りする。まず、各国に比べ法整備の遅れが目立つ。米ナビガントリサーチによると、世界の自動運転車システム開発において、トップは米アルファベット傘下のウェイモであり、米独企業が上位にランクインする。中国のIT大手バイドゥ(百度)が8位に入り、9位がトヨタ、10位がルノー・日産・三菱アライアンスだ。

2018年10月よりアウディジャパンが販売する最上級セダン「A8」の新型モデル。車両本体価格は1140万円(税込み)から。日本ではレベル3の自動運転を「封印」されている。(写真=時事通信フォト)

わが国は「改正道路運送車両法が成立したから大丈夫だ」といっていられる状況にはない。政府は、より積極的に民間の意向をくみ取り、各企業が重視する“オープン・ノベーション”を促進するために、実証実験をサポートしたり規制を緩和することが求められる。それが、社会全体が安心してアクセスできる、新しい移動のコンセプト創造に欠かせない。

「100年に一度の変革」を迎えた自動車業界

今、世界の自動車業界が大きな変革に直面している。それはトヨタ自動車の豊田章男社長によれば「100年に一度の大変革」だ。

変革を表すコンセプトとして「CASE」というキーワードがある。Cは、ネットワークとの接続性(コネクティビティ)を意味する。Aは自動運転のオートノマス、Sはシェアリングエコノミー(共有)を指している。Eは自動車の電動化(エレクトリック、EV化)だ。

今回の改正道路運送車両法(以下、改正法)は、CASEの中でもAの自動運転を対象にした法律である。国土交通省の資料によると、改正法が成立した理由は、現行の法律が自動運転車を想定していないことにある。つまり、テクノロジーの進歩に対して、国のルールが追い付いていない。