例えば職場に自慢話ばかりする上司がいる。いつもイライラさせられるが、どう対応すればいいのか。慶應義塾大学の前野隆司教授は「なぜ自慢話にイライラするのかを考えてみるといい。相手を変えるより、自分を変えることを考えた方が手っ取り早い」とアドバイスする――。

※本稿は、前野隆司『幸せな職場の経営学「働きたくてたまらないチーム」の作り方』(小学館)の一部を再編集したものです。

自慢話ばかりする上司にウンザリ

大多数の方は、可能なら幸せに働いた方がいいということに異論はないでしょう。

しかし、職場にはさまざまな問題や課題があります。幸せに働くことなど、そう簡単にできるはずがない。うちには無理。言下にそうおっしゃる方も現実にはまだ多いのが実情です。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/SilviaJansen)

しかし、私はさまざまな企業や職場で共同研究や事例収集を行っていますが、そうした企業でお話を伺うと、職場における課題や悩みは業種や業態は違っていても、ある程度、似通っているケースが少なくありません。

ここでは、職場における悩みについて、幸福学や心理学に基づく解決策をご紹介します。

「自慢話ばかりする上司にうんざりしている。どうしたらいいか」【30代・金融】

社内のみならず、飲みの席でもひたすら自分の武勇伝や理想、理念を押し付ける上司というのは、どの組織にもいるものです。自分が嫌われていることに気づいていないから、「獲物」を見つけたら1分でも長く話したいという欲求を発散してしまうのかもしれません。管理型社会の中で対人関係について学び、人格を成長させる機会を逃した残念な方と言うべきです。

この状態を改善させる2つの方法を、幸福学や心理学の見地から述べてみましょう。

嫌味なく「どうしてそんなにしゃべるんですか?」

まず1つ目の方法は、ややチャレンジングですが、対話によって、相手に話が長過ぎることに気づいてもらうこと。心理学用語で「アサーション(率直・素直、かつ相手のことも気にかけた主張)」と言います。

相手に、周囲の困惑や懸念について気づいてもらうためには、心の底から相手に興味を持ち、純粋な興味や関心、大胆に言ってしまえば、「愛」を込めて相手に聞いてみるのです。

「どうして、そんなにたくさんしゃべるんですか?」と。

相手は一瞬、戸惑うかもしれませんが、あまり嫌な気持ちにはならず、「あれ? どうして自分はこんなに長く話すんだろう」と自問するでしょう。

ここでの対話のコツは、皮肉や批判からではなく、「純粋に相手のことを知りたい」という気持ちからの問いかけであるべきだということです。相手の様子を慎重に慮りながら、「思ったことを素直に尋ねる」といった態度が重要です。

これは、あなたの対話力を鍛えてくれる大きなチャンスなのです。