就業経験がまったくない32歳の男性は、うつ病による障害年金78万円を受給できるようになった。そこで定年間近の57歳の父親が、ひとり息子の老後プランを専門家に相談。すると男性は「これでは老後が心配だ」と話をひっくり返した。なにが不安だったのか――。
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「32歳の長男の将来的なお金の見通しを立てたいのです」

「長男(32歳)もお金の話をしたいと言っているので、一度自宅まで来ていただき相談にのってもらえませんか?」

もうすぐ定年を迎える父親(58歳)は、長男が障害基礎年金を受けられるようになったことから「将来的なお金の見通しを立てたい」ということでした。

ご相談に向かうと、父親と母親(57歳)が玄関で迎えてくれました。ただ、リビングには硬い表情の長男が。あいさつの言葉はなく、控えめにお辞儀をするだけでした。

【家族構成】
父 58歳 会社員
母 57歳 専業主婦
長男 32歳 無職
【財産】
現金預金 2500万円
自宅マンション 2700万円
【収入】(年間)
父 給与収入 600万円
母 パート収入 70万円
長男 障害基礎年金 78万円
【支出】(年間)
540万円

いじめが原因で16歳でひきこもり、16年間が経過した

長男は生まれつき体も弱く、病気がちだったそうです。人に気を遣いすぎてしまう、また、人から言われたことを気にして傷つきやすい、という傾向があったためか、中学生の頃にいじめを受けてしまいました。

朝起きると、頭痛やめまいがするようになり、ひどい時には寝床から起き上れなくなってしまったそうです。中学2年生のときに不登校となり、卒業まで一度も学校に通うことはできませんでした。

中学卒業後、本人の希望で通信制高校に入学。通学日数は週2日に決めました。最初のうちは何とか通学もできていたのですが、やはり学校で人に気を遣いすぎてしまい、通学途中で人混みの中にいたりすることにも強いストレスを感じてしまい、疲れ果てて家に帰ってきたそうです。

家に帰るとそのまま食事もとらず入浴もせずに寝床に入って眠り続けることも。外に出て人と会うことに負担や苦痛を感じてしまい、通学する日の前日や当日の朝に体調を崩してしまうこともしばしばでした。

勉強にも身が入らなくなっていき、結局、通信制高校は2年で辞めてしまいました。16歳の時でした。

その後は32歳になる現在まで外に出ることもほとんどなくなり、一日の大半を自分の部屋の中で過ごすようになりました。時には寝床から起き上がることができなくて、一日中寝たきりになってしまう日もあったそうです。

両親にも将来に対する不安や心配はありましたが、どこに相談をすればよいのかも当時はまったくわからなかったとのことでした。長男の回復を願いつつ、ただ静かに見守り続けるしかなかったそうです。

長男が30歳になった頃、ご家族で話し合ってご長男を病院に連れていくことにしました。

するとうつ病と診断。薬による治療も開始しました。それでも社会復帰はできず、家族のサポートを受けながら何とか生活をしている状態です。