回転ずしチェーン「かっぱ寿司」がついにどん底から抜け出した。前年同期比で7年ぶりにプラスとなったのだ。かつての業界最大手は、なぜここまで低迷したのか。店舗経営コンサルタントの佐藤昌司氏は「肝心のすしがおいしくなかった。だが、地道な品質改善の結果が、ようやく消費者にも伝わるようになった」と分析する――。
かっぱ寿司HPより

「他社に品質で劣る」と反省

販売不振が続いていた「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイトが、どん底から抜け出すことに成功した。2018年度(19年3月期)の既存店売上高が前年同期比0.1%増となったのだ。

この意義は大きい。同社は12年度から17年度まで6年度連続で前年同期を下回っていた。17年度は前年同期比1.7%減、16年度は4.2%減、15年度は4.2%減、14年度は4.0%減、13年度は0.4%減、12年度は2.1%減だった。2011年まで業界最大手だったとは思えないほど、深刻な状況が続いていたのだ。

※12~13年度は2月期決算、14年度は14年3月~15年3月までの13カ月間の変則決算、15~17年度は3月期決算

かっぱ寿司が苦戦を強いられていたのは、すしのおいしさに問題があったためだ。回転ずし業界で低価格競争が激化するなか、「平日一皿90円(税込)」キャンペーンを行うなど価格の安さを重視したため、品質がなおざりになっていた。「安かろう悪かろう」になってしまい、客離れにつながってしまった。

低品質だったことは同社も認めるところで、13年度の決算において「他社との比較において(中略)主力の商品品質レベルにおいても劣っている」と反省の弁を述べている。

ネタの加工を工場から店舗へ

そこで同社は商品品質の改善を図った。例えば、従来はすしネタの加工を工場で一括で行っていたが、2014年からそれを店舗で加工するように改めた。それにより、「作りたて」や「新鮮さ」をアピールできるようになった。また2015年には、注文を受けてから調理して新鮮な商品を提供するフルオーダー型の新業態を開発した。

2019年3月からは、各地の名産品をすしネタとして提供する取り組み「地産店消」を開始。第1弾ではとやま市漁業協同組合(富山市)と連携し、「富山湾産 白えび」を期間限定で販売した。5月15日からは第3弾として、焼津港(静岡県)のカツオを提供する。こうした取り組みで品質の良さをアピールしたい考えだ。

一連の地道な改善施策により、おいしさが消費者に伝わったことで、7年ぶりの前年同期超えにつながったと考えられる。もちろんサイドメニューの強化なども影響しただろうが、それでも本筋のすしがおいしくなければ評価はされず、集客にはつながらない。やはり、すし屋はすしがおいしくてナンボだ。