米朝首脳会談が物別れに終わった腹いせなのか

この状態が続くと、国際社会は無法者のレッテルを貼るだろう。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長のことである。米朝首脳会談が物別れに終わった腹いせなのか。立て続けに飛翔体を発射してわが意を通そうとする。

しかも飛翔体の一部は、弾道ミサイルだった。国連安全保障理事会の制裁決議に違反する行為である。国際社会を敵に回すと、北朝鮮の念願の経済再建など望めなくなる。その辺りを金正恩氏はどう考えているのか。

北朝鮮が5月9日午後、4日に続いて再び飛翔体を発射した。発射されたのは短距離ミサイル2発で、最大で420キロ飛行して日本海に落下した。高度は50キロ余りに達した。発射場所は北朝鮮北西部の平安北道(ピョンアンブクド)の亀城(クソン)だった。

2019年5月9日、朝鮮人民軍前線・西部戦線防御部隊の火力攻撃訓練を指導する金正恩朝鮮労働党委員長(写真=朝鮮通信/時事通信フォト)

金正恩氏の真の狙いはどこにあるのか

北朝鮮は8日夜、4日の1回目の飛翔体発射について、国営メディアを通じて「自衛目的の訓練だ。地域の情勢を激化させるものではない」と正当化した。金正恩氏の狙いはどこにあるのだろうか。

2回目の飛翔体が発射された9日夜、NHKのニュース番組が北朝鮮の元駐英公使で3年前に韓国に亡命した太永浩(テ・ヨンホ)氏とのこんなインタビューを伝えた。

インタビューの中で太氏は「北朝鮮はアメリカが変わるまで黙って待つというシステムではない。協議を維持しながらも、アメリカに強力なメッセージを送ることが重要なのだ」と語った。

「アメリカが変わる」とは、北朝鮮に対する制裁緩和を指す。今年2月末にベトナム・ハノイで行われた2回目の米朝首脳会談で、金正恩氏は段階的な非核化を主張して制裁緩和を求めた。ところがアメリカのトランプ大統領は「完全な非核化」を強く要求し、その結果、2人の会談は物別れに終わった。

アメリカ本土の核攻撃だけは回避したいトランプ氏

太氏は「トランプ大統領に核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験はしないと約束したが、短距離と中距離のミサイルについては約束しなかった。アメリカの姿勢が年末までに変わらない場合、中距離ミサイルも発射する可能性がある」とも話した。

大陸間弾道ミサイルとは、アメリカまで届く長距離ミサイルのことだ。トランプ氏はこれによってアメリカ本土が核攻撃を受けるような事態だけは、回避したいと考えている。