会社にプラスか否かは、直感で判断できる

依頼ごとには、直接僕に言ってくるもの以外にも、広報・秘書経由で来るものがありますが、誰かが忖度して僕のところまで届いていないケースもあります。カルビー時代は講演の依頼を相当断っていたようです。

RIZAPグループ取締役 松本 晃氏

ただ、私は依頼されたことは基本的に断らない主義です。僕に「会いたい」と言う方がいれば、時間が許す限り、会うようにもしています。

しかし、売り込みの相談には応じません。僕はこの二十数年間、自分の役職、立場を使って物を買ったことが1度もありません。ところが、私のところに来たら物が売れるんじゃないかと考えている人が大勢おられます。とにかくあらゆることが持ち込まれます。

別に、買うことじたいが不愉快だから断るのではなくて、1度やると接待をはじめ、様々な面倒なことがついてくるのが嫌なんですよ。僕は物を買う権限が自分にはない、と決めていますので、そういう依頼があったときは、担当者や適任者を紹介するようにしています。その際、私が紹介したからといってオブリゲーション(責務)を感じる必要はないし、報告も要らないと伝えています。

依頼や相談を受ける際の判断基準は、はっきりしています。それが会社にとってプラスになるかどうか、それだけです。仕事をしている間に人と会うわけですから、プラスがあると判断すればどんな人にでもお会いしますよ。そのあたりの判断は直感でできます。

ただ、会ってみないとわからないような件に関しては、頭から断るということは基本的にしないですね。もっとも、ちょっとしたテクニックは使います。いろんなお客様の来訪を一日にまとめて、朝から晩まで30分、1時間ごとにこなしていくんです。ポツポツと五月雨式では困るので。こちらから出かけることも多いですよ。そのほうが相手のことがよくわかって、勉強になりますね。

僕は勝ち馬にしか乗らない。骨折したロバに乗ることはしません。経営の依頼でも、そのときに考えるのは勝ち目があるかどうか。つまり、僕がその会社の経営を引き受けて、うまくいくかどうかです。今まで手がけた会社の大部分は、その時点ではあまり良くない。けれど、可能性は十分ある。自分がやったらうまくいくという自信のある会社だけでした。

カルビーの会長兼CEOを引き受けたときもそうです。業績はずっと横ばいで、デフレ市場の中でこれから人口が減り、子どもが減るとなれば一見、成長の目はない。しかし、もともと商品力はある会社です。経営戦略に問題があったので、そこを何とかすれば伸び代はあると思い、引き受けました。