各社が「スマホ決済」の主導権を巡り激突している。このうちメルカリの「メルペイ」は10連休にセブンイレブンを対象に「70%還元」を実施した。先行する「ペイペイ」などは20%還元だったので、メルペイの還元率は破格だ。エース経済研究所の澤田遼太郎アナリストは「メルペイの優位は還元率だけではない。後発だが、他のスマホ決済より普及する可能性が高い」という――。
スマートフォン決済サービス「メルペイ」について記者会見するメルカリの山田進太郎会長=2019年2月20日、東京都渋谷区(写真=時事通信フォト)

「竹下メルペイ通り」の反響

フリマ最大手のメルカリは、今年2月、スマホ決済サービスの「メルぺイ」を始めた。4月には登録者数が100万人を突破。そしてGWでは、「GW半額ポイント還元」や、原宿・竹下通りを「竹下メルペイ通り」として、さまざまな特典を受けられるキャンペーンを実施し話題を呼んだ。

スマホ決済を巡っては、各社がキャンペーンを実施している。先行するソフトバンクとヤフーの「ペイペイ」は、昨年12月に「100億円キャンペーン」を実施して大きな話題を呼んだ。還元額が100億円に達するまで、支払額の20%か、抽選で全額のポイントを還元するというものだったが、家電量販店での行列や、SNSで全額還元を“自慢”する投稿が相次いで話題となり、わずか10日間で終了した。現在はその第2弾を実施中だ。

LINEペイは20%還元や2000円が当たるくじのキャンペーンを展開、楽天ペイでも還元やポイントプレゼントを行うなど、競争は激しい。

一方でこうしたキャンペーンやサービスはあくまでも“飛び道具”であり、サービスの本質ではない。現時点では「ペイペイ」が約600万人のユーザーを獲得し、認知度においても他社より先行しているが、筆者は後発のメルペイに優位性があると見ている。

ポイントは3つある。1つ目は入金の手間の問題、2つ目は利用できる加盟店獲得の問題、3つ目はサービスの利便性、あるいはデザイン性とでもいうべきスタイルの問題だ。

メルカリの売上は「出口」を求めている

1つ目の入金については、ペイペイやLINEペイは、事前に現金をチャージするか、クレジットカードなどと紐づける必要がある。しかしメルペイは、メルカリを利用して得た売上金をそのまま使用できる。他のサービスより利用のハードルが低い。

このメルカリでの売上金は月平均で約400億円にも上る。メルペイができる以前は、このほとんどが銀行から出金されていた。出金は月の決められた日にしかできない不便なものであったため、今後その多くがメルペイに向かうと見ている。

これに対抗して、ペイペイでは、ヤフーのサービスから得たTポイントをペイペイポイントに切り替え、ヤフオクの売上金をチャージできるようにする方針を発表した。導入されれば相当数のユーザー獲得が見込まれるが、一人あたりのTポイントが少額にとどまり使いにくいことを考えると、メルペイの優位性は揺るがないだろう。

2つ目の加盟店獲得では、ペイペイが自社の営業網で開拓を進める一方、メルペイではNTTドコモの「iD」などのカード会社を中心に提携に注力している。とくに競合となるLINEペイと加盟店と業務提携し、両社のQR決済を使う加盟店を相互に開放し、各サービスの利用者がそれぞれの加盟店で決済ができるようにするのはペイペイと差をつけたといえる。

加盟店舗数はペイペイが約50万店に対し、メルペイは「iD」とコード決済の導入だけでも135万店舗以上の導入が見込まれている。今後も動きがあるだろうが、拡大ペースではメルペイの戦略に優位性があるだろう。また、メルペイがスマホ決済では唯一、セブンイレブンへの導入に成功していることは見逃せない。