今年4月、男子ゴルフのタイガー・ウッズが、14年ぶりにマスターズを制覇した。ウッズは2014年5月を最後に世界ランク1位から陥落し、17年には1199位まで下がっていたが、この2年で完全復活を遂げた。落語家・立川談慶さんは「ウッズは『ご褒美が最後にくる』感覚を知っていた。この感覚を手に入れるには筋トレがいい」という――。
(写真左より)マスターズ・トーナメント最終ラウンドの18番、14年ぶり5度目の優勝を決めて喜ぶタイガー・ウッズ=2019年4月14日(写真=AFP/時事通信フォト)。落語家・立川談慶さん

車内広告には“ツッコミどころ”が満載

季節は春から夏へと変わりつつあり、電車に乗っているだけで汗ばむような陽気になってきました。ふと、いつも使う京浜東北線の車内吊り広告に目をやりますと、ツッコミたくなるものばかり目につきます。

たとえば最近乗った車両は、広告のほとんどが転職情報サイトのもので占められていました。もし海外から来た旅行客が日本語を読めたら、「日本人はそんなに今の仕事が嫌いなのか」と思うのではないでしょうか。

また、某予備校の広告には、「なんで私が東大に!?」と記されていました。「そんなのあんたが受験したからだろ? 俺に聞くなよ!」と、思わずまぜっ返したくなります。

このほかに目立つのが、男性は「増毛」、女性は「脱毛」の広告ですな。外国人ならきっと、「日本人は毛にしか興味がないのか」と疑問に思うでしょう。なんとも「不毛」な話です。

そんなツッコミ目線から見ていると、テレビもまた、人間の矛盾を即座に映し出す鏡なのだと感じることがしばしばです。とあるワイドショーでコメンテーターが、フェイクニュースについて「ネットの情報を丸のみしない方がいい」とコメントした直後、コマーシャルに切り替わる際に「続きはウェブで」と真顔で言っていたのには大笑いしました。

タイガー・ウッズを復活させた根本要因

また、ニュースを見ていましたら、「踏切での待ち時間がこらえきれなくなって、遮断機をのこぎりで切る人」が現れました。「あちゃー」と思っていましたら、海の向こうのアメリカではタイガー・ウッズ選手の奇跡の復活劇を報じていました。

ここで私は思うのです。イライラして遮断機を切ったのも、世界ランキング1000位以下から約2年でトップ10に返り咲いたのも同じ人間なのに、一体この差は何だろうか、と。

無論、両者の間には資質や才能など歴然とした差が横たわっていますので、比較するのはナンセンス。しかし、唯一この両者を同じ土俵で語ることのできる要素が、「忍耐力」ではないでしょうか。仮に才能や資質が先天的な領域に属するものだとしても、日々の積み上げという後天的な努力の正体は忍耐力です。

つまり両者は忍耐力に決定的な差があるからこそ、片や簡単にブチ切れておかしな行動に走り、片やコツコツと努力を重ねて成功を手に入れた、と言えるわけです。

そして、この記事を書きながらテレビを見ていたら、ちょうど「上りと下りを乗り間違えた中年男性が、走行中の新幹線から非常ドアの開閉装置を操作して線路に飛び降りた事件」を取り上げていました。

なぜ、人はこれほどキレやすくなってしまったのでしょうか。