日本を代表する新興宗教として、大きな勢力を持つ創価学会。その組織が持つものとして広く知られるのが「聖教新聞」と「公明党」である。この2つは、創価学会の拡大にどんな役割を果たしてきたのか。宗教学者の島田裕巳氏が解説する――。

※本稿は、島田裕巳『親が創価学会』(イースト新書)の第1章「創価学会とはどういう宗教なのか」の一部を再編集したものです。

統一地方選後半戦の結果を受け記者会見する公明党の山口那津男代表=2019年4月22日、東京都新宿区の同党本部(写真=時事通信フォト)

会員が自ら購読料と配達を請け負い、布教活動

『聖教新聞』は、1951年4月20日に創刊された。最初は10日ごとに刊行される旬刊だったが、しだいに発行の頻度が高くなり、1965年からは日刊になった。宗教教団の出している日刊の新聞は現在、統一教会(現在は世界平和統一家庭連合)系の『世界日報』と『聖教新聞』だけである。

『聖教新聞』の購読者を増やすことが組織の拡大に結びつくと考えているため、創価学会に入会していない人間にもその購読を勧める。場合によっては、会員自身が購読料を負担し、読者になってもらうこともある。したがって、熱心な会員は、新聞の購読料を何部分も負担している。配達も会員がおこない、それは信仰活動の一環としてとらえられている。配達の報酬は、まったくないわけではないが、かなり薄謝である。ただ、配達員は、創価学会の組織から「無冠(むかん)の友」と呼ばれ、賞賛されるし、会員は「池田大作(いけだだいさく)先生のお手紙」を配達する重大な使命を果たしていると考えている。

『聖教新聞』の布教活動は、創価学会で重要視されている折伏(仏教用語で、相手の主張を論破し、屈服させることで教えを受け入れさせること)に近い。以前は、創価学会に対して猛烈に反発する一般の人たちが少なくなかったが、それも、かつては創価学会が盛んに折伏をおこなっていたからである。

会員が自宅に押しかけてきて、延々と折伏をおこなうこともあった。なかには、一般の日蓮宗や他宗派の寺、あるいはキリスト教の教会に出かけていき、そこで説かれる教えは間違っていると折伏をおこなうような会員たちもいた。これが、創価学会は攻撃的な宗教であるというイメージを生むことにつながった。

創価学会が会費無しで成り立つワケ

経済的な面での創価学会の特徴は、創立当初から、入会金も月々の会費もないというところにあった。会員になっても、お金はかからないというわけである。

ただ、それでは組織としての活動はできない。そこで、資金源として活用されたのが、『聖教新聞』の購読料だった。現在、『聖教新聞』の発行部数は550万部に達しているとされている。会員が『聖教新聞』の拡大に熱心なのも、その購読料が創価学会の活動を支えているからである。