星野リゾートの施設は、どこへ行っても一定以上のサービスレベルを保っている。なぜなのか。ホテル評論家の瀧澤信秋氏は「フラットな組織づくりと現場責任という人事システムに秘密がある」と指摘する――。

※本稿は、瀧澤信秋『辛口評論家、星野リゾートに泊まってみた』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/phototechno)

現場に責任を持たせるフラットな組織

星野リゾートはメディアからの注目度が高く、筆者のもとにも星野リゾートに関連した仕事のオファーは多い。テレビでいえば単なる施設紹介というよりは、利用者目線のホテル評論家ならではの視点で星野リゾートを分析してほしいといったものもある。

2017年には、あるテレビ番組から“星野リゾートで働くヒト”をテーマとした企画オファーをいただいた。既に本書(『辛口評論家、星野リゾートに泊まってみた』)に絡み、さまざまな施設で現場取材をすすめていたので好機でもあった。放送では3人のスタッフにスポットを当て、日々奮闘する現場に密着するという内容だった。

番組内では、星野リゾートの大きな特徴として各施設への権限委譲を挙げた。運営特化戦略を取ったことが星野リゾートの成長要因であることは本書でも触れているが、それは同時に全国各地へ拠点が拡大する要因にもなっている。現場責任を重視することは自然な成り行きだったのだろう。

諸々の意思決定は、本部からの指示ではなく現場で行えるということを番組で紹介した。現場に責任を持たせたことは星野リゾートがフラットな組織を意識しているという点にも起因する。運営会社として勝ち残っていくという強い覚悟が、オリジナリティある組織作りに自ずと影響を与えてきたことも容易に想像できる。

顧客満足度のポイントが成果として返ってくる

「フラットな組織」という言葉からは、公平や民主的といったイメージを想起するが、実際の現場を取材して見えてきたもののひとつにシビアさがある。「フラットな組織づくり」と「現場責任」を持たせたことは星野リゾートという組織における成功の両軸と筆者は捉えている。

フラットな組織とはいえ現場責任においては当然評価軸がある。評価軸は顧客満足度調査がベースになっており、顧客満足度のポイント(査定という表現が当てはまるかわからない)が、自身の成果として返ってくるという。これは現場のスタッフにとってはかなりシビアなのではなかろうかと思料する。

モチベーションを持ち続けることが前提なのは言うまでもないが、そうした反面、現場責任の下では自らなしたサービスが直球で跳ね返り、サービスの跳ね返り方が自分の成果に直結する。明確明白なロジックともいえる。