政権復帰以来の敗北だ。4月21日の衆院2補選で、沖縄3区は野党系の屋良朝博氏、大阪12区は維新の藤田文武氏が勝利。自民党が2012年以降、国政の補欠選挙で同日に2敗するのは初めてだ。自民党と安倍首相はピンチにある、との見方も広がる。ところが永田町では早期の解散論が高まっている。なぜなのか――。
記者会見を終えて退室する自民党の二階俊博幹事長(手前)と萩生田光一幹事長代行(右)=4月22日、国会内(写真=時事通信フォト)

「敗者の弁」の二階幹事長は憔悴しきっていた

「大変残念な結果だ。わが党の候補者に支援をいただいた皆さまに心から感謝を申し上げたい。結果は謙虚に受け止めて敗因の分析を急ぎ、今後に備えたい」
「参院選への影響はないとは言えないが、この結果を受けて皆さんが緊張感を持って臨むだろう。次なる選挙に雪辱を果たしていきたい」

21日夜、二階俊博幹事長は憔悴した表情で記者団に敗者の弁を語った。涙ぐんでいるようにも見えた。

確かに衝撃的な結果だ。2012年に自民党が政権復帰して以降、国政の補欠選挙で自民党が同日に2敗するのは初めてだ。

沖縄3区は米軍普天間飛行場の移設先となる名護市を含む選挙区。玉城デニー氏が知事選出馬のため辞職したのに伴って行われた。多少の足並みの乱れはあったが野党統一候補として元新聞記者の屋良氏が出馬。自民党から出馬した元沖縄北方担当相の島尻安伊子氏は最初から敗色濃厚だった。

本来、解散を決断するのは「今なら有利だ」と踏んだ時

一方、大阪12区の方は自民党議員の死去に伴い、その甥にあたる北川晋平氏が出馬した「弔い選挙」。本来なら必勝パターンだった。しかし4月7日に行われた大阪府知事選、同市長選で連勝した維新の勢いが自民党をのみ込んだ。

プレジデントオンライン編集部では3月21日の「地方選で安倍自民党の足並みが乱れるワケ」で、大阪府知事選、市長選、衆院大阪12区補選で自民党が3連敗する可能性を指摘した。1カ月後にそれが的中したことになる。「最悪でも1勝」というもくろみが外れたのだから、自民党の傷は深い。

それだというのに、永田町では衆院解散風が吹き始めた。首相が衆院解散を決断するのは「今なら有利だ」と踏んだ時だ。衆院補選で連敗した時に解散論が出るのは不思議ではある。

しかし視野をもう少し広げると、安倍晋三首相が解散を決断するタイミングとして、今はそんなに悪くないことが分かる。