LINEが金融事業に力を入れている。野村証券やみずほ銀行と手を組み、フィンテック事業を次々と立ち上げている。立教大学ビジネススクールの田中道昭教授は「その起点となるのが年間取引額が4500億円超というLINEペイだ」と分析する――。

※本稿は、田中道昭『アマゾン銀行が誕生する日 2025年の次世代金融シナリオ』(日経BP社)の一部を再編集したものです。

2018年06月28日、LINE株式会社が開催した事業戦略発表会「LINE CONFERENCE 2018」で、記者との質疑応答に臨む出澤剛社長(左)と、舛田淳取締役(千葉県浦安市のアンフィシアター/写真=時事通信フォト)

現在のLINEは広告事業をコアとする会社

本書で取り上げている日本の4大金融ディスラプターの中では、LINEは最も新興の企業です。2000年9月、韓国企業のネイバーの100%出資により創業されました。ネイバーは広告やコンテンツ・サービス、ビジネスプラットフォームなどを含む韓国最大手の総合ネットサービスです。もともと韓国系の企業とあってLINEの売上の約3割は海外事業によるものですが、会員数を見ると海外は伸び悩んでいる状態です。2016年第2四半期においてはタイ、台湾、インドネシアの3カ国で9500万人いた会員数が、2018年第1四半期においては8700万人と減少しています。

現在のLINEは広告事業をコアとする会社です。2017年度決算においては、総売上1671億円のうち765億円が広告収入です。LINE公式アカウント、LINEスポンサードスタンプ、LINEポイント、LINE@、タイムライン広告、またポータル広告としてのNAVERまとめなどが、ここに含まれます。前年比を見ても39.9%の増加です。フェイスブックやグーグルほど極端ではありませんが、広告収入が大きなウェイトを占め、その成長が総売上を押し上げている構図を見て取ることができます。

LINEペイの決済高は4500億円を超えた

その一方で、コミュニケーション事業及びコンテンツ事業は、成長が鈍化、あるいは下落基調にあります。コミュニケーション事業とは、トーク、スタンプ、着せ替えなどが該当します。これは2015年から2017年にかけて1.05倍と横ばい状態です。

コンテンツ事業は、ゲームやマンガ、ミュージック、占いなどです。こちらは同0.81倍と減少傾向です。惜しむらくは、コンテンツ自体の平均寿命の短さです。ヒットの有無に売上が大きく左右されるため、ビジネスモデル的にも収益的に安定しないのはコンテンツ事業の宿命と言えます。

しかし、今注目すべきは「その他事業」の成長ぶりです。金額そのものは202億円とまだ大きなものではありませんが、2015年から2017年にかけての伸びは3.37倍にも達しているのです。LINEペイを含むフィンテック事業はここに位置しています。

LINEペイの決済高は2017年に4500億円を超えました。グローバルアカウント登録者数は4000万人を超え、月間取引件数は1000万件を突破しました。ローソン、大手ドラッグストアなど全国チェーン店での加盟店網を拡大して、メガバンク3行を含む50行以上の銀行と提携しています。