米アップルが、訴訟合戦を繰り広げてきたクアルコムと一転して和解した。和解の背景にあるのは高速通信規格「5G」。アップルはクアルコムとの和解により、2020年をめどに5G対応のiPhoneを発売するとみられている。なぜアップルはクアルコムに対して強硬姿勢を貫けなかったのか。一連の5G騒動を検証しよう――。
世界最大のモバイル見本市「MWC19バルセロナ」の様子。クアルコムのブースには「5G」の2文字が並んでいた。(写真提供=MWC)

5Gスマホで各国より遅れる日本、先行する韓国

今年2月、スペイン・バルセロナで世界最大のモバイル見本市「MWC19バルセロナ」が開催された。この場で、各メーカーはスマートフォンの5G搭載モデルを発表してきた。今回の特徴は、5Gに対応するだけでなく、折りたたみディスプレイや4Kディスプレイ、3眼以上の多眼カメラ、ジェスチャー機能など、さまざまな機能強化モデルが発表されたことだ。

中でも鼻息が荒かったのは、サムスン、LG、KT、SKテレコムという韓国勢だ。韓国では3月末から世界初となる5Gの実用サービスが始まる。また欧州、中国、オセアニアも、今年度は、ラストワンマイルを目指して、粛々と展開を広げようとしている。なお米国では昨年10月から5Gのサービスを開始しているが、これはスマートフォン向けではなく、Wi-Fiに代わる家庭用5Gルーターでの利用だ。

一方、日本のサービス開始は2020年の予定。2019年9月には、ドコモがラグビー・ワールドカップとあわせて試験サービスを開始する。5G用コンテンツでも目立った動きはなく、日本は各国より遅れている印象がある。

世界の5G商用化計画
世界の5G商用化計画(画像提供=エリクソン・ジャパン株式会社)

MWCで聞かれた「来年もiPhone 5Gは出ない」という噂

こうした5G製品が発表される中、私は「アップルは今年はおろか、来年もiPhone5G搭載モデルを投入できない」という情報を耳にした。この背景にあったのが2017年から続いてきたクアルコムとの訴訟問題だ。

2017年初めにアップルは「クアルコムの特許使用料が不当に高い」として、引き下げを求める訴訟を起こし、これに対しクアルコムは反対にアップルを相手に知財侵害の訴えを世界各地で起こした。この結果、18年秋のiPhoneの最新モデルではクアルコム製品は排除され、アップルはクアルコムの5Gチップセットを搭載できない状況にあった。

だが今年4月16日、アップルは一転してクアルコムとの訴訟問題で全面和解したと発表した。今後、クアルコムから5Gチップセットの供給を受けることになる。この結果、アップルは2020年をめどに5G対応のiPhoneを発売するとみられている。