世界160以上の国・地域でサービスを展開する米金融大手シティグループ。同社に36年在籍して要職を務め、2018年8月、日本法人代表に就任したリー・ウェイト氏に、一流のビジネスマンに求められる条件について聞いた。

入社後すぐの業界の洗礼

大学を出て就職した証券会社、E・F・ハットン(シティグループの前身の一社)で働き始めた日のことは、今でも忘れられません。

私はワシントンDCの支店でトレーニングを受けることになっていました。支店のアシスタントマネジャーが、私を支店のブローカー(セールス担当者)たちに紹介して回ります。最後に、その支店で一番稼いでいるブローカーのところに行き、「今日からトレーニー(研修員)として働きます」と挨拶をしました。

その間、その人はずっとこちらに背中を向けたままで、その後ゆっくり私のほうを向き、「わかりました。じゃあ6カ月あげます」と言いました。一人前になるまで6カ月間だけ待ってやる、という意味です。あまり歓迎されていた感じではなかったですね。

シティグループ日本代表 リー・ウェイト氏

当時の証券業界は非常に厳しい世界で、職場もタフでないと生き残れないような雰囲気がありました。ですから私も、なんとか6カ月の間に能力のあるところを示して、私がその支店にとって価値ある存在であることを証明しようと努力しました。おかげで、そのブローカーとは、その後一緒に釣りに行くほど仲良くなることができたのです。

ただ、そうした厳しい環境はまったく過去のもので、この30年以上の間に証券業界も大きく変わりました。今はそんな態度を取る人は容認されませんし、実際にそういう態度を取るような人もいないでしょう。

それ以来、長年にわたりシティグループで働いてきましたが、その間、さまざまな上司の下で仕事のやり方を学んできました。その中には、「何をすべきか」だけでなく、「何をしてはならないか」という教訓もありました。

私が最初に付いたマネジャーは、非常にいい人で個人的にも大好きでしたが、優柔不断なタイプでした。例えば、「AかBかを決めてください」とお願いすると「1週間後に返事をする」と言い、1週間後に聞くと「まだ決まっていない」と言うような人でした。こうした決断力のなさは、この業界では致命的です。私は、「最初の決断の段階で80%くらい合っていればいい、もし間違っていたら後で修正すればいい」と考えていましたので、その人とは仕事がしづらかったことを覚えています。