日産のカルロス・ゴーン氏が会社資産の私的流用の疑いで、4度目の逮捕を受けた。ゴーン氏は容疑を否認しているが、日産の内部監査・内部統制に問題があったことは事実だ。同志社大学大学院の加登豊教授は「日産の企業統治は、仕組みのうえでは模範的だった。しかしそれが機能しなかった。この問題を解決するヒントは、近江商人の思想にある」と指摘する――。
権力闘争か、トップの暴走か。カルロス・ゴーン容疑者は容疑を全面的に否定している。3月6日、保釈された後、弁護士事務所を出るゴーン容疑者。4月4日には再逮捕された。(写真=AFP/時事通信フォト)
今回の一穴:取締役会でトップの方針に対する異論が一切出ない(毎回予定通りの時間で終わる)

臨時株主総会でカルロス・ゴーンの取締役解任

4月4日、カルロス・ゴーン氏は、オマーンの販売代理店に日産自動車の資金を不正に支出し、5億円を超える損害を日産自動車に与えた会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕された。

昨年12月21日(私的投資によって生じた個人の18億円余りの損失を日産自動車に付け替えた会社法違反(特別背任))、12月10日(第1回目の逮捕とは異なる期間の報酬の過少申告に関する虚偽記載)、そして、11月19日の金融商品取引法違反(逮捕容疑は、役員報酬額の有価証券報告書への虚偽記載)に続く4度目の逮捕である。

3回目、そして、4回目の逮捕容疑は、会社資産の私的流用(本人をめぐる訴訟費用の肩代わり、個人事務所の運営費用の拠出、個人利用のための海外施設の買い入れ、子息の学費肩代わり、不正な会社資金の海外送金等も含まれていると言われている)に関するものである。日産自動車は、これまでの経緯を踏まえて、4月8日に臨時株主総会を招集し、カルロス・ゴーンの取締役解任を決定した。

現時点で、ゴーン氏は容疑をすべて否認していることを確認しておく必要があるが、容疑の少なくても一部が事実であるとして本論を進める。

権限と権力を勘違いするトップマネジメント

最初に確認しておかないといけないのは、日産自動車の倒産危機を救ったのはルノーであったという事実である。そして、ルノーから送り込まれたプロの外国人経営者がゴーンであった。

彼は、日産再生のため「日産リバイバルプラン」を策定し、自動車非関連事業を整理した。主力工場であった村山工場を含む複数の工場を閉鎖し、グループ全体で2万人を超える大幅な人員削減などを次々と実施。1年間で連結当期利益の黒字化を実現したのち4年間で2兆円を超える借金の返済を完了させた。多くの人は、日本人経営者では実行できない大胆な組織変革を成し遂げた彼を称賛したのである。

この成功により、ゴーンの社内における地位は不動なものになるとともに、権限の集中化が進んだ。カリスマ性が高まるとともに、その言動に対して異議を唱える者は社内には不在となってしまった。

優れた経営者は、自社の成長と発展がなによりも大切であることを知っている。大きな権限には、重圧に押しつぶされそうな責任が付随することを理解しており、責任の遂行に細心の注意を払う。権限は権力につながる危険性を熟知しており、理不尽なものだけに限らず、あらゆる権力の行使にあたっては慎重になる。

このような自覚を持つ経営者は、今回のような問題は決して起こさない。ただ残念ながら、優れた経営者は極めて少数であり、大部分のカリスマ経営者は権限を権力と勘違いしてしまう。ゴーンも残念ながら、勘違いをした経営者の一人だったのだろう。