投資効果抜群だった「ブラジル」の成長ぶり

21世紀の最初の節目を迎えたが、ここ数年の最大のパラダイム転換は何かといえば、先進国と新興国の立場が入れ替わったことだろう。

一昨年のリーマンショック以降、冷え込んだままの先進国経済とは対照的に、新興国はそれぞれ成長のエンジンを再点火させている。たとえば昨年のブラジル投資のリターン率は、株式市場の伸びに加えて通貨が強くなった相乗効果で200%以上を記録した。

世界で昨年のリターン率が100%、つまり投資が倍以上になった成長市場は5~6カ所あり、ブラジルのように3倍になって返ってくる国も出てきている。世界の富裕層がファンドに投資したり、保険や貯金に入れている不要不急の資金の総額は8000兆円といわれるが、その巨額なボーダーレスマネー、ホームレスマネーの多くがそうした新興国や、先進国でもカナダやオーストラリアのような資源国に流れ込んでいるのだ。

今のトレンドとして、複雑な国にはそうした資金は向かわない。複雑な国とはアメリカやフランス、ドイツのように、八方美人の政策からいろいろなことを模索して手を出す、さまざまな要素を持っている国のことだ。

投資の世界には「コングロマリット(複合企業体)・ディスカウント」という言葉がある。GEのような複合企業は一つ一つの事業単体の価値は高いのに、コングロマリットとしてのGEの株価は低い。ジャック・ウェルチのような傑出した経営者がいなくては、どこかに大企業病の芽が出てくると警戒されるからである。

今、世界的に見て株価が高いのはアップルしかり、グーグルしかり、比較的単純な商売をしている企業だ。総合電機、総合自動車、総合食品などの企業は総じて株価が上がらず、事業を個別に見たほうが評価は高い。日本の企業でいえば日立製作所などはその典型で、事業をバラしたほうがよっぽど時価総額は高くなる。

実は国家にも「コングロマリット・ディスカウント」がある。