菅義偉官房長官が「令和おじさん」として存在感を増している。これまでも実力は認められていたが、玄人受けする存在から抜けきれなかった。しかし新元号の発表以降、知名度が急上昇。政界でもステージが上がり、首相候補としての声も聞こえてきた――。
記者会見する菅義偉官房長官=2019年4月8日午後、首相官邸(写真=時事通信フォト)

「ポスト安倍にふさわしい政治家」で6位から4位に

「全く考えていません」
「全く考えていません」

菅氏は4月8日の記者会見で同じ言葉を繰り返した。1回目は、月刊文芸春秋5月号に「安倍後継は、菅氏も十分資格あり」という二階俊博党幹事長のインタビュー記事が掲載されていることへの感想を求められたもの。

もうひとつは産経新聞とFNNの世論調査で「ポスト安倍」にふさわしい政治家を尋ねたところ、菅氏が5.8%を集め4位に入ったことについての質問への回答だ。前回の同調査では菅氏の名を上げた人は2.7%で6位だった。産経新聞は9日の朝刊で「ポスト安倍 菅氏浮上 『令和おじさん』浸透」と持ち上げている。

4月1日午前11時40分過ぎ、全国注視の中で記者会見を開き、新元号を発表したことで、知名度を上げた菅氏。まさに赤マル急上昇中なのだ。

ライバルの麻生氏は「福岡知事選」で惨敗

安倍政権は、菅氏と、麻生太郎副総理兼財務相、二階氏の3人が安倍晋三首相を支えるという構図だ。3人は必ずしも親密というわけではない。微妙な関係ではあるが、それぞれ付かず離れずしながら安倍氏に忠誠を誓ってきた。「3本の矢」である。

しかし7日投開票の統一地方選前半戦では、菅氏以外の2人は、評価を落としてしまった。

麻生氏は地元・福岡の知事選で、自身が推す新人候補が惨敗。しかも選挙戦の中、麻生氏の元秘書だった塚田一郎参院議員(当時国土交通副大臣)が「忖度」発言をして批判を浴びた。「忖度」発言は福岡での惨敗の一因となり、他の地域でも少なからず自民党に逆風を吹かせた。

敗戦を受け7日夜、麻生氏は記者団に対し「誠にふがいない。われわれの力不足。おわび申し上げたい」と語り、深々と頭を下げた。「森友」問題の文書改ざんなどで批判の矢面に立ちながら、開き直るような態度をとり続けていた麻生氏にしては珍しく、しおらしい対応。それだけショックだったのだろう。