サッカー日本代表の新エース・中島翔哉選手がポルトガルのポルティモネンセからカタールのアル・ドゥハイルへ約44億円で移籍した。多くのサッカーファンは中島選手の欧州での活躍を期待していたようで、批判の声が目立つ。だが心理カウンセラーの小倉広氏は「批判する人たちは、自分自身のネガティブな欲求や感情を他者に押し付けているだけだ」と指摘する――。
カタールのアル・ドゥハイルに移籍した中島翔哉選手(写真左。2019年2月5日、カタール・ドーハ)(写真=AFP/時事通信フォト)

お金目当ての「年金リーグ」を選んでガッカリ

サッカー日本代表のエース中島翔哉(以下、中島選手)が、ポルトガルのポルティモネンセからの移籍先としてカタールのアル・ドゥハイルを選んだことは、日本のサッカーファンに大きな衝撃を与えました。

なぜならば、私を含む多くのサッカーファンが移籍先として、イングランド、スペイン、ドイツ、イタリア、フランスの欧州5大リーグ、中でもビッグクラブと呼ばれる強豪への移籍を期待していたでしょうから。

中島選手は、ヨーロッパでは5大リーグに次ぐ二番手リーグと言われるポルトガルで月間MVPを受賞するなど大活躍をし、一躍世界から注目されるようになりました。そして、5大リーグの複数のチームから関心が寄せられ、「移籍間近!」との記事が紙面をにぎわせていたのです。

また、カタールなど中東リーグは別名「年金リーグ」とも呼ばれ、盛りを過ぎた有名選手が晩年にお金を目当てに過ごす二流の「金満リーグ」だともいわれています。だが、中島選手は、24歳という若さで中東を選んだ。そのことに、多くのファンが失望してしまった、とも言えるでしょう。

人は自分の中にある“認めたくない”ことを他者に投影する

中島選手がどのリーグやチームを選ぼうと、それは彼の自由です。他者が口出しをすべきことでないことは自明の理です。にもかかわらず、なぜ、私を含むサッカーファンの多くが彼の選択にイラッときてしまったのでしょうか。

精神分析学で有名なジークムント・フロイトが提唱し、娘のアンナ・フロイトが理論をまとめた、自分を守る無意識のはたらき、「防衛機制(Defence Mechanism)」の一つとして「投影(Projection)」があります。

投影とは「自分自身の中にあるけれど“認めたくない”“できればなかったことにしたい”ネガティブな欲求や感情を他者に押し付けること」です。

例えば、本当は「自分はわがままで自分勝手な面がある」とうすうす感づいていたとしましょう。しかし、それは社会的には良くないこと、だと思われています。

ですから、それを“認めたくない”“なかったことにしたい”と無意識で思います。すると、やたらと、わがままで自分勝手な人が目につき、その人を「わがままで自分勝手だ!」と批判し、過剰にイラッと感じてしまう。これを投影と呼ぶのです。

投影が起きるとき、多くの場合、怒りを伴います。なぜならば、自分の中にある、否認したいほど見たくない欲求や感情を相手が堂々と披露している(ように見える)からです。そんな相手に対してイラッとくるのは当然、と言えるでしょう。