イギリスには「パブリックスクール」と呼ばれる全寮制の私立中高一貫校がある。そこに息子2人を合格させた日本人の母親が、今回インタビューに応じてくれた。卒業生の30%以上がオックスフォード大とケンブリッジ大に進学するという超エリート校の実態とは――。

※本稿は『プレジデントFamily2019年春号』の掲載記事の一部を再編集したものです。

イートン校の校舎(写真=iStock.com/Kurt Pacaud)

長男は英ウィンチェスター校に、次男はイートン校に

イギリスのパブリックスクールは、チャールズ皇太子、ウィリアム王子の母校・イートン校をはじめ、多くの国際的リーダーを輩出する私立中高一貫校の総称だ。中世以前のイギリスの学校は、入学が階級や宗教、出身地などで制限されていたのに対し、貴族階級以外にも開かれた学校として設立されたため、“パブリック”という名がついている。

多くが全寮制のエリート教育校で、代表格であるイートン校からは卒業生の30%以上が世界大学ランキングで1位、2位を争うオックスフォード大とケンブリッジ大に進学する。

息子2人をパブリックスクールに合格させた、シンガポール在住のモウリー康子さんは、受験を思い立ったきっかけを次のように語る。

「フランス人の夫も私もそれぞれの母国で公立育ち。イギリスのパブリックスクールとは全く無縁でした。ただ、金融業界で働く夫が『イギリス人のパブリックスクール出身者は社交力が抜群。数字に強いフランス人や日本人がどんなに成果を上げても、全体を率いるリーダーはイギリス人だ』とよく話していました。イギリス、日本、シンガポールと転勤続きで、さらにこの先どこに住むかわからない不安もあり、長男が10歳のときに全寮制のパブリックスクールなら、落ち着いて教育を受けられると思い、受験を考え始めました」

現在、モウリーさんの長男はウィンチェスター校に、次男はイートン校に通う。

「パブリックスクールへの入学は狭き門で、多くの受験家庭は8歳から“プレップスクール”という入学準備校に子供を入学させます。さらにプレップスクールに入学させるための“プレ・プレップスクール”という4歳から通う学校もあるんです。イギリス人にさえ狭き門なので、『落ちてもいいからチャレンジしよう』というくらいの気持ちでした」

受験準備に費やした時間はわずか半年だった

「家族で学校見学に行くとどの学校も大学並みの敷地を持ち、テニスコートやラグビー場などの設備も充実していて、圧倒されました。建物は歴史のある石造りで、『ハリー・ポッター』の魔法学校のような雰囲気です。見学をして、ここで子供を学ばせたいと強く思いました」

パブリックスクールに入るためには、まず11歳で1次試験にあたるプレテストを受ける。これに合格した子だけが2年後、2次試験にあたるコモンエントランス(私立校統一テスト)を受験することができる。

モウリーさん一家は、長男がプレテストを受ける年齢で、東京からシンガポールへ転勤になった。本格的に受験準備に費やした時間はわずか半年だ。

「イギリスにはもちろん、旧イギリス植民地である香港やシンガポールにも受験のための塾や家庭教師の派遣会社があります。わが家は問題集を家で解かせつつ、試験直前の3カ月間は週に1回、スカイプを使ってイギリスの家庭教師に対策をお願いしました」

試験のメインは口頭試問だが、学科試験前に門前払いされてしまう学校もある。

「次男の通うイートン校の場合、海外からの受験生は“ISEB”というテストを受験し、一定の点数を取ると“イートンテスト”というIQテストのような試験に進みました。イートンテストはコンピュータで解答していくのですが、途中で後戻りできません。4択で選んだ答えを受けて次の問題に進んでいくため、1問間違えると、続きの問題もすべて間違いになってしまうんです」

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