24時間365日ひとり思索

2017年4月の社長就任から、ひとりで過ごす時間が極端に減りました。これは大きな悩みの1つです。

大和証券G本社社長兼CEO 中田誠司氏

会社にいると会議や打ち合わせがつづき、自分のデスクにいられる時間はわずか。夜は夜で、お客様や社員との会食がほぼ毎日のように入っています。週末も、土日のどちらかはゴルフに出かけます。私は法人営業を担当していた時期が長く、本部長を務めたころも、仕事のことで頭はいっぱいのつもりでした。しかし社長になると、その密度がより高まった。24時間365日考えていると言っても大げさではありません。

考えている内容も変わり、本部長時代はあくまで自分の担当している領域が中心。2~3年先を意識しながらも、やはり足元の業績への対応に大きな比重がありました。

これが社長になると、視野が会社全体、グループ全体へと広がります。時間軸も5年先から10年先、場合によっては20年先といった中長期の戦略も入ってきて、自分が社長ではなくなっている将来まで見据えて深く考えていく。組織のトップに立つと見える景色が違う、ということを改めて実感しています。

社長になってひとりの時間がほとんどなくなった代わりに、誰かと一緒にいるときでも、常に頭の片隅で仕事のことを考えるようになりました。そのときの頭の中の自分はまさに孤独です。最近はゴルフのプレー中でも、球を打って歩き出したとたんに、もう仕事のことを考えているときがあります。

ひとりでじっくり考えるのに最適なのは、出張の移動時間。特に国内出張では、忙しい人なら飛行機を利用するような距離でも、新幹線を利用することがあります。東京から広島や秋田に向かうときなどがそうです。資料に目を通しながら思案を巡らせる。1時間でも集中できれば、それだけでも貴重なひとり時間です。

自宅でくつろいでいるときも完全なオフではありません。家族とテレビのバラエティ番組を観ている間も、頭の片隅で「何か仕事のヒントになることはないか?」と考えているのです。

24時間で、本当にひとりでじっくり考えるのは、布団に入ってから。健康管理の一環として、睡眠をしっかり取ろうと決めているので、毎晩22時半から23時の間に布団に入ります。夜の会食がある日も、2次会には行かず、21時ごろには家路につきます。起床はだいたい朝6時ごろなので、7時間以上は布団のなか。その間ずっと眠っているのではなく、高い頻度で仕事のことを考えています。

実はごく稀に、休日にこっそり会社に出てくることがあります。たとえば決算説明会の前とか長期出張の後など年に数回、本当にひとりで集中して考えることができる環境を求めてのことです。とはいってもそれほど長い時間ではなく、昼過ぎに会社に到着して、夕飯前には帰宅するから数時間です。ただし習慣化するといけないので、大きなイベントがある直前の本当に深く考える時間が必要な場合に限っています。当社は07年から「19時前退社」を励行し、働き方改革には先進的に取り組んできましたので、これはあまり大きな声では言えませんね。