いまや就職活動でのインターンシップは常識になりつつある。それでいいのか。法政大学キャリアデザイン学部の田中研之輔教授は「キャリア教育のためにインターンは重要だ。しかし採用活動のために就業体験の伴わない『名ばかりインターン』を行っている企業がある。このままではインターンが誤解されてしまう」と指摘する――。

解禁前の「採用直結型インターン禁止」の方針

経団連は、昨年2018年10月9日、就活ルール廃止を決定しました。就活ルール廃止は、今後の就活開始時期の自由化と、新卒一括採用の選考プロセスの多様化、つまり、新・就活への歴史的転換を意味する表明だったと捉えることができます。

これに待ったをかけたのが、政府です。政府は、経団連が就活ルール廃止を決めた約3週間後の10月29日に、面接解禁時期について、大学4年生の6月から実施するという現行日程を維持することを経済界に求めると決定したのです。大手企業のみならず、ベンチャーや外資系企業にも周知していくことになりました。

選考開始時期を遵守するのか、しないのか、企業の新卒担当者がそれぞれ他社の様子をうかがう手探り状態が続いていた矢先の2019年2月26日に飛び込んできたのが、就活解禁前の「採用直結型インターンの禁止」を要請する方針を政府が固めたというニュース(「採用直結のインターン、政府も禁止要請へ 21年春入社」朝日新聞2019年2月26日)でした。

「インターン」と言っても複数の種類がある

現在、インターンシップは、「産学連携による単位取得型インターン」と、「企業主導のインターン(短期・中期・長期)」の2つが混在する中で実施されています。

細かく分類すると、次の4種類のインターンがあるのです。

(1)産学連携による単位取得型インターン
(2)企業主導の短期インターン(ワンデーインターン)
(3)企業主導の中期インターン
(4)企業主導の長期インターン

※写真はイメージです(写真=iStock.com/metamorworks)

このうち、政府が現段階で「採用直結型インターンの禁止」を要請しているのは、具体的には(2)の企業主導の短期インターン(ワンデーインターン)です。というのも、ワンデー「インターン」という名称で実質的には、就活解禁前に会社説明会を前倒して採用を行っているからです。

政府としては、今後も現行ルールを踏襲するために、就活解禁前に採用を目的とするインターンは控えるように企業に要請するということです。

しかしながら、企業側の視点で考えてみてください。人材不足が慢性化するこの国で、未来を担う新卒人材の獲得に向けて、企業がさまざまな形で取り組むことは、企業の成長論理からはごく自然なことです。