「死後の手続きはこんなに大変です」がベストセラーに

相続ブームである。

きっかけは40年ぶりに相続法が大改正されたことだった。旧相続法が、高齢化社会や社会環境の変化に対応できなくなったためである。

いち早く相続法改正の特集を組んだのは『週刊現代』だった。だが、私を含む多くの出版関係者は、相続が読者増につながるとは、正直思っていなかった。それでも『現代』は、意固地に見えるほど相続にこだわった特集を毎週のように続けた。

今年の正月明けには「老親とあなたに降りかかる面倒な『現実』死ぬ前に用意しておくこと」(1/19・26号)という大特集を組んだ。それが対前年比130%増という“快挙”を成し遂げ、業界の話題をさらった。

相続をあつかった週刊現代の特集誌面。タイトルには「死」という言葉がならぶ。(撮影=プレジデントオンライン編集部)

これに驚いたライバル誌も遅れてはならじと追随した。『週刊文春』『週刊新潮』『週刊朝日』『サンデー毎日』、テレビのワイドショーも参入して、相続が大きな社会的関心事になったのである。

さらに相続問題の元祖『週刊現代』は、2月15日に『週刊現代別冊  死後の手続きはこんなに大変です』(980円)として発売したのである。3月16日の朝日新聞朝刊の広告で、「たちまち重版! 22万部!」と謳っているから、これも大成功といえるだろう。

団塊ジュニアにとって「自分の取り分」は重大な関心事

この相続ブームはまだまだ続くはずである。なぜなら、この背景には今の日本が抱えている根深い“病根”があるからだ。

敗戦後に起きたベビーブームが産み落とした団塊世代も全員が高齢者になり、第2次ベビーブームで生まれてきた団塊ジュニアたちも中高年になって、定年、年金生活が目前に迫ってきている。

社畜といわれながらも、高度成長期からバブル崩壊まで会社に尽くし、色・カネ・出世を人生の目標として生きてきた団塊世代は、定年後も年金をもらって悠々自適とはいかないまでも、生きていける「勝ち逃げ世代」といわれる。

だが、団塊ジュニアたちは、バブル崩壊とソ連崩壊による「就職氷河期」に遭遇し、「不運の世代」とも呼ばれ、何とか就職できても、年功序列、終身雇用は崩壊していて、定年後に不安を抱える人たちが少なくない。

なかには、育児と親の介護をしなくてはいけないダブルケアに苦しむ者、介護離職する者もいる。彼ら、彼女たちにとって、親がどれぐらい財産を残してくれるのか、自分の取り分はどれぐらいあるのかは重大な関心事である。