残業時間を減らし、生産性を上げようと各社が取り組む「働き方改革」。改革で本当に働き方は変わったのか。今回は現場で働く管理職&若手社員の実態を調査した。彼らの抱える悩みに働き方改革の先達が回答する。

仕事時間が短くても楽しむ方法

部下を残業させるな、働き方を変えろと言われ、困惑している管理職の方がたくさんいらっしゃいます。ただ、意識の持ち方さえ変えれば仕事のやり方も一新するのかと言えば、そんなこともありません。人間は環境が変わらなければ、意識も変わらないものだからです。実際、仕事のやり方は変わっていないという方もいらっしゃるはずです。

立命館アジア太平洋大学(APU)学長 出口治明氏

たとえば会議時間を減らしたいとします。いくら会議を減らせ、効率的に会議をしろと号令しても、会議を主催する人は「自分の会議は大事だ」と思っています。ほかの人が「その会議は不要だ」と言えば、主催者は「この会議の意味がわかっているのか!」と怒るでしょう。ほかの人も嫌われたくないからと仕方なく参加します。その結果、会議の数も時間も従来と変わらないのです。

一番効果が出るのは、夜中のうちに経営者が指示して会議室を半分に減らすことです。いままで10部屋あった会議室を5部屋に、半分なくしてしまうのです。朝社員が出勤すると会議室が半分になってしまっていて、仰天するわけです。これは工夫するしかないと思うでしょう。

働き方改革も同じです。残業させるな、効率的に働けと、ただ言っていても何も変わりません。一番効果があるのは、たとえばノー残業デーを週1日から3日に増やすことです。社員みんなが、いままで週4日は残業できたのに2日しかできなくなった、どうしようと考えはじめ、その結果働き方にイノベーションが起きるのです。

働く時間が減った分、何をやって何をやらないかの選別も必要になってきます。それは常に考えなければいけません。僕は若いころ上司から仕事を頼まれたら、「この仕事はなぜ自分がやらなければいけないのか」「何が仕事の目的なのか」を徹底的に考え抜きました。それで目的や、やる理由が腹落ちしたら、今度はどうやったら最短でできるかを考えます。自分の案を考えたあとで先輩にいままでどうやっていたのかを聞く。自分の手法と先輩の手法を比べて、自分のほうが勝っていれば「よっしゃ勝った。1勝や」と、先輩のほうが優れた手法だったら「1敗。まだまだやな」と自分で星取表を作っていました。これをやりはじめると仕事が楽しめるようになるのです。「今日は3勝1敗や。ちょろいな」とかね。