口の中を見れば寿命がわかると言ったら驚くだろうか。口の中には、さまざまな病気を発症させる怖い細菌が潜んでいて、シグナルを発しているからだ。早速自分の口の中を覗いてみてほしい。

老後、みんなが「歯」で後悔している

以前プレジデント誌では、シニア1000人(55歳から74歳の男女)を対象に「今、何を後悔していますか」と尋ねるアンケートを行った(2012年11月12日号)。すると、健康面では、運動不足や食事の不摂生、毛髪の手入れ不足などを上回り、「歯の定期検診を受ければよかった」がトップになった。「もっと歯を大切にすればよかった」と思わせる現象が、この年代に入ると起こるのだ。歯科医の波多野尚樹氏(波多野歯科医院院長)は、口の中を見れば寿命がわかるという。口の中がどんな状態だと、早死にするのか、取材した。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/junce)

例えば酒を飲んでそのまま寝てしまった朝、歯の裏や舌の上、口の中を覆っている口腔粘膜全体が、ネバネバで不快な感じになったことはないだろうか。口の中には、何百種類もの細菌が棲み着いていて、これが、口の中に残った糖をエサに大繁殖し、ネバネバの粘性物質を作って口腔内にべったりと張り付いているのだ。これを口腔バイオフィルムという。プラーク(歯垢)ともいうが、バイオフィルムの中では歯周病菌も、大繁殖する。歯周病菌は菌の細胞膜そのものに毒があるため、歯肉に触れただけでも炎症を起こす。悪くなると膿が出て、ひどい口臭がするようになる。

自覚症状としては、歯を磨くと血が出る程度で痛みもないことが多い。だが、鏡で口の中を見ると、歯の間の歯肉が赤く腫れ、軽くぶよぶよしていたり、また最近歯間に食べ物が詰まりやすくなったと気づくだろう。

実は、歯周病の人の口の中は、歯肉だけでなく粘膜全体が赤くただれているのだ。舌の表面に白いカビがこびり付いて「舌苔(ぜったい)」ができている人も多い。口内炎もできやすくなり、喉の奥が赤く腫れて白い粒々が付いている。これらはみな、歯周病という感染症の症状で、全身の病気を引き起こす寿命に関係する怖い兆候だ。