生活用品大手のアイリスオーヤマの業績が好調だ。家電業界に詳しい神原サリーさんは「他社のベテラン技術者を大量採用し、ユニークな家電を生み出している。さらにオフィス環境を整えることで、『ここで働きたい』と人が集まる会社になりつつある」という。技術者を集めるアイリスの仕組みとは――。

家電事業が好調で売上高は前年比113%のアイリスオーヤマ

2018年度決算速報によると、アイリスオーヤマを含む25社のアイリスオーヤマグループの総売上高は4750億円と前年比113%、経常利益5.7%を確保できる見込みだ。アイリスオーヤマ単体でも売上高は1550億円で前年比113%となっている。

こうした背景には、国内では家電事業やLED照明を中心とするBtoB事業やネット通販事業の好調、海外でも家電製品の販売が順調に伸びていることがあるようだ。

家電やLED照明事業の売上が大きく伸びているのはなぜか。

それはユーザーイン発想の「なるほど家電」と呼ばれる新商品の開発や、エアコンやドラム式洗濯機などの大型白物家電事業の拡大、さらには4Kテレビの発売など、積極的でスピーディな取り組みに起因している。それを可能にしたのが、パナソニックやシャープなど他メーカーの技術者たちの大量採用だ。

2012年、“開発したい”技術者たちが他社から集結しはじめた

1971年に創業したアイリスは、もともとはプラスチック収納や園芸関連商品に強みがあった。2000年代半ばから家電に参入し、ホームセンター向けの空気清浄機やシュレッダー、その後、IHクッキングヒーターやサイクロン掃除機も手掛けるようになった。そして、2010年3月にLED照明事業に本格参入。当時、他メーカーが1個約1万円で売っていたものを、アイリスは2500円で売り出すことに成功したのだ。

ただ、ユーザーの認知度はそれほど高くはなかった。その後も、いわゆる“ジェネリック家電”と呼ばれる単機能で価格の安い家電を扱っており、既存メーカーに対抗できる勢力ではなかった。

転機が訪れたのは、2012年12月。商品開発力強化のために大阪で技術者の採用を開始したことだった。この頃から大手メーカーからアイリスへ転職する人が増え、2013年には梅田に大阪R&Dセンターを開設。2014年8月には心斎橋に移転して、拡充させた。これが消費者視点に立った家電のスピード開発につながった。