読書はどれだけ速く多くを読んだかより、どれだけ深く多くを得ることができるか。速読だけでは十分ではない理由がここにある。単に情報を得る読み方と思考レベルを上げる読み方は異なる。論理的思考力が強力な武器になるビジネスパーソンに必要な読書法は――。

「速読」は、本を速く読むのではない

ビジネスパーソンなら本やレポートを素早く読みたいというニーズは、多かれ少なかれ持っているだろう。それだけに、世の中には「速読法」や「速読術」と銘打った書籍やセミナーがかなりある。そこには「新書1冊を20分で読む」とか「1日に10冊読破」といった、信じられないようなキャッチコピーが書かれている。

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今回編集部の依頼で、「速読トレーニング講座」を受講することになった。そこで「速読講座」を検索をしてみると、いくつもの講座が出てきた。そのなかで“一日集中”が目に留まった有料講座に申し込み、2万円の受講料を振り込んだ。

すると、事前にトレーニングDVDと簡単なテキストが送られてきた。事前勉強して驚いたのは「速読は黙読のスピードを何倍にも上げるのではない」ということだ。まして、斜め読みや飛ばし読みではなく、本を速く読むためには、集中力を向上させ、見る、あるいは見る力を強化し、理解力、記憶力を鍛えるのだという。それによって黙読なら1分間400~600字を、3倍の1200~1800字読めるようにするのである。

当日のスケジュールは午前9時半~午後6時、昼食をはさんでのおよそ7時間。参加者は少人数制ということもあって9人。私のほかに40代前後のビジネスマン3人と20代のOL、主婦、定年前後の男性、そして、中学受験を控えた小学6年生とその父親というメンバーだ。

カリキュラムの開始に当たって、講師から確認されたのが「速読でどんな本を読みたいか?」というセミナーへの参加動機だった。私自身、ライターという仕事柄、ビジネス書、あるいはシンクタンクなどのレポートを読む機会が少なくない。基本的にはしっかりと時間をかけて読むのだが、ときには1、2冊のビジネス書を短時間で目を通す必要にも迫られる。それを伝えたところ、講師からは「そうした期限が迫っているときにこそ速読は役立ちます」といわれた。

単語を追ったり、読んだりしてはいけない

さて、最初は速読の基本となる呼吸法から始まった。丹田と呼ばれるヘソの下を意識しながら、ゆっくり6秒吸って、12秒で吐くという腹式呼吸を繰り返す。それによって、集中力を高めるという。坐禅でも使われるので、知っている人も多いかと思う。